こんにちは。読書@toiletです。
読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。
前回の続きです。
参考前回の記事はこちら↓
リーマンショックの原因といわれる「サブプライムローン」も、なんとかなるさ理論
リーマンショックの原因と言われる「サブプライムローン」。第2次世界大戦終了から約60年、米国の地価は値下がりしたことはなく、地価は下がらない=不動産神話と、政府による様々な規制緩和などにより発生した住宅バブルから生まれた、ローン商品群です。
サブ_プライムと名付けられている通り、
✔ プライム=住宅購入のために貸したお金が返ってくる確率が高いローン
✔ サブ_プライム=プライムローンより、住宅購入のために貸したお金が返ってくる確率が低いローン
つまり信用度が低いローンのことです。
通常、銀行は私達の大切なお金を集めて、様々な事業者や個人へ貸し出す信用創造をメイン事業としていますので、貸したお金がちゃんと返ってくるよう、貸出先を厳しく審査します。
ある程度、安心だと分かっても、万が一にも回収が滞らないよう担保抵当を設置します。住宅ローンの場合は、購入した住宅です。
ところが、住宅バブルの米国では、担保となる住宅がどんどん値上がりする状態でした。ちょっと返済は無理かもしれないが、住宅を売ればローンを十分回収できるどころか、貸出先にも利益がでるような状態です。
ローンの借り手が返済できるかどうかが、あまり問題でなければ、金融機関は我先にと住宅ローンを販売します。返済されるかどうか?は二の次です。返済されなくとも、担保の住宅を売却すれば利益が上がるので。
末期には、所得も自己申告、職業も不明、英語すら分からない人にまで、書類を偽造してまで販売されていた様子です。
例えばアルバイト収入で年収が250万くらいの人に、港区のマンションを販売していたようなものです。
結果論的に、今から考えるとあり得ない現象ですね。恐らく当時、金融機関や消費者に蔓延していたのは、
✔ こんな金額貸しても焦げ付くに決まってるけど、周りも貸しまくっているから、大丈夫だろう」
✔ 買うべきではない気がするけど、自分の周囲は買って、いい家に住んでいる。周りも買ってるんだから、自分もなんとかなるんだろう」
✔ 今までもヤバイ時あったけど、なんとなったから」
という心理、つまり「なんとかなるさ理論」です。
困ったことが発生した際、放置しておいて、勝手になんとかなることはまずありません。気づいていない、もしくは見えていないだけで、誰かが何処かでなんとかしているのです。
多くの場合は、両親だったり、同僚や上司、取引先(取引相手)が、何とかしているのです。
「なんとかなるさ理論」は、他力本願に100%支えられているため、なんとかできる人がいない場合、当然なんともなりません。
そうして、誰にも払えるはずのない=誰もなんともできない、高額な住宅ローンは徐々に返済不能となった案件が増え、住宅の需要を供給が上回り地価が下がったところで、米国の住宅バブルは弾けました。
大量の一般市民が住む家を失い、路上生活を強いられることになったそうです。
なお、リーマンショックという史上最大級の金融危機は、米国投資銀行を中心に格付け会社も抱き込んで、本来リスクの高いはずのサブプライムローンを最上位の証券に変え、販売しまくっていたことの方が、より深刻な原因のようです。。
結果、米国から投資銀行という業態は消滅しましたね。
投資銀行が消滅する過程は、本書で臨場感たっぷりに書かれています。
本音と建前
「本音と建前」とは、日本人の特徴的な主張方法として認識されていると思います。特にビジネス交渉において、最初からストレート且つ最大限の要求をする欧米に対し、最大限の要求は厚かましく、交渉相手の感情を害しかねないため、まずは建前から入る日本式の交渉がよく引き合いに出されます。
筆者は外国人とビジネス交渉をしたことがないのでわからないのですが、お互いの建前から本音を探り合い、少しでも自分に有利な条件を引き出していく以外に、交渉の仕方があるのでしょうか?
最初にお互いの要望を出し合い妥協点を詰めていくのは、交渉ではなく作業なのでは。。。。
また、そのような作業ではお互いの立場や力関係が大きく影響し、交渉の余地などないのではないでしょうか。。。
本書では、ウォール街を舞台に様々な交渉の場面が描かれていますが、建前論どころか嘘つき放題の騙し合い、騙されたほうが負け、本当の狙いは誰にも悟らせないという人間ばかりです。
ただ、相手を騙すための嘘≠建前ではないので、このような交渉の進め方は遺恨を残すことになりますね。
筆者は上手に「本音と建前」を駆使した日本式の交渉術は非常に優れたシステムだと思います。
先程も述べた通り
✔ 交渉の場に立つプレーヤーの立場や力関係を超えた条件を引き出せるかもしれない
✔ 交渉人のスキルが結果に反映されやすい
と考えているからです。
政治的なスキャンダルで「忖度」などという言葉のイメージが大変悪くなっていますが、お互いが表面上は争わず、本音を忖度しながら妥結する一点を探っていく過程こそが、ビジネスの醍醐味だと思います。
ここまで書いて読み返すと、筆者は交渉では負け知らずの、スーパーネゴシエーターのようですが、客観的に見て「普通」です。
この本を読むなら、こんな人
✔ 金融に興味のある人
✔ 海外で働いてみたい人(特にアメリカ東海岸)
✔ 金儲けが上手くなりたい人
✔ 世界で一番、金儲けがうまくなった気になりたい人。
※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。
■作品;「ハゲタカⅣ グリード(上・下)」
■著者;真山仁
■種類;経済小説
■刊行;2015年6月
■版元;講談社文庫