「ウソじゃないですよ、博士。エジソンは、天才とは一%の閃きと九九%の汗であるって言ったんです。」
※ダイヤモンド社 ハゲタカ外伝 スパイラル 真山仁著 P5~6より引用。
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こんにちは。読書@toiletです。
読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。
ハゲタカ外伝 スパイラルについて
本作は真山仁先生の「ハゲタカシリーズ」第5作。これまでのハゲタカと違い、主要メンバーは、ほとんど登場しないスピンアウト的な位置づけの作品になっています。
ちょうど、本書の冒頭にハゲタカシリーズを時系列にまとめられていました。
1.「ハゲタカ」舞台は1997~2004年
2.「バイアウト(ハゲタカⅡ)」舞台は2004~2006年
3.「レッドゾーン(ハゲタカⅢ)」舞台は2007~2008年
4.「グリード(ハゲタカⅣ)」舞台は2005~2008年
本作は、上記3~4と重なる、2007~2008年を舞台としています。ハゲタカシリーズは、企業買収の攻防が主な題材となっていますが、買収対象と比例して主人公の競合相手も、どんどんスケールアップしていきました。
シリーズⅠ:邦銀 → シリーズⅡ:東証1部上場の名門企業 → シリーズⅢ:日本最大級の自動車メーカー → シリーズⅣ:米投資銀行
といった具合です。
今回の「ハゲタカ外伝 スパイラル」では、一転して、大阪の零細企業にスポットを当てている点が新鮮でした。規模こそ小さいものの、日本の「ものづくり」の根幹を為す技術をしっかりともった「町工場」を中心に展開されます。スピンアウト作品なので、主人公はシリーズでも主要人物として登場する「柴野建夫」となります。天才的な企業買収者の活躍を描く、これまでのシリーズと異なり、あくまで汗臭く、泥臭く、しかし懸命に働く姿を描く本作の方が、より親近感が湧く内容だと思います。
柴野建夫について
繰り返しになりますが、本作の主人公である「柴野建夫」は、ハゲタカシリーズでも主要な登場人物です。経営が危うくなった企業を立て直すための「ターンアラウンドマネージャー」という聞き慣れない肩書で活躍します。
筆者は、ハゲタカシリーズのドラマや映画は見ていないのですが、柴野建夫の描写があるたびに、なぜか「佐々木蔵之介さん」が頭に浮かびます。これ、本当に自分でもなぜだかわからないのですが。柴野建夫の特徴は以下の通りです。
✔ 元大手都市銀行出身で財務に明るく、英語が堪能な企業再生のスペシャリスト。企業再生の手腕における評価は非常に高い。
✔ ハゲタカシリーズの登場人物中、最も真面目かつ誠実で常識的な人物
✔ 登場人物の多くが「天才肌」であるのに対し、「努力型」の人物なので引き立て役に回ることが多い
✔ エリートを絵に描いたような経歴であるが、熱血漢で浪花節が好き。自身を「青臭いと評す」
✔ 若い頃は上司からパワハラまがいのプレッシャー、中堅になってからは夫婦関係も険悪になるなど、意外に苦労が耐えない。
特に佐々木蔵之介さんを連想させるものないので、自分でも不思議です。
本作「ハゲタカ外伝 スパイラル」では、柴野建夫の特徴である「熱血漢」「浪花節」が遺憾なく発揮されます。本作は、ターンアラウンドマネージャーとして、大手電機メーカー(たぶん東芝くらいの大手企業)の専務という肩書からスタートします(第2作の『バイアウト』の続きからですね)。そこで、銀行員時代に義理のある大阪の零細町工場の社長が急死し、同時にその町工場も倒産の危機にあるという報を受け、あっさり大手メーカーの専務を辞し、自己資金1,000万を増資用に準備した上で、町工場の専務に転身し、立て直しに東奔西走します。
本シリーズの中で、この柴野建夫さんは「筆者のような、ごく平均的日本人」に近いキャラクターとして親近感を抱いていたのですが、そんなことなかったみたいです。
「東芝クラスの大手企業の専務を、あっさり辞める=この先、働かなくでも食べていける」
「自己資金を1,000万を増資用に用意する=1,000万くらいなら無くなっても生活に困らない」
柴野さんも相当なお金持ちですね。。。少し遠くに感じました。それでも好きなキャラクターではありますが。
エジソンの言葉の意味
冒頭の言葉は、柴野建夫が大手企業の専務を辞めて、お手伝いすることにした大阪の町工場の社長に向けて発せられたセリフです。有名な言葉ですね。誰もが知っている言葉なので、社長も当然知っているのですが、その意味を下記のように解説しています。
「言葉は間違うてない。けど、意味が違う。エジソンは、自分ほどの天才でも努力が必要だと言ったんとちゃうぞ。一%の閃きがないのやったら、九九%の努力なんぞ無駄やっちゅう意味や。
※ダイヤモンド社 ハゲタカ外伝 スパイラル 真山仁著 P6より引用。
ちなみの、この町工場の社長は大阪大学工学部を優秀な成績で卒業した、腕利きのエンジニアで「博士」と呼ばれています。また、数多くの特許を取得している、やはり天才肌の人間です。
「閃きを伴わない努力は、その一切が無駄である」
言ってくれますね。ただ、この言葉は、現実と化していくように思われます。今まで優秀であることの条件の内、いくつかは急激に価値を劣化させています。
✔ 知識+記憶力・・・インターネットによる知のオープン化により価値下落
✔ 計算能力・・・・・スマートフォンにより、誰もが電卓を常備している状態となり価値暴落
また、おそらく近未来には
✔ 語学力・・・・・・AIによる同時翻訳の精度向上により、価値下落
となるのではないでしょうか。
筆者は今後20~30年で「色々な知識を身につけている」「早く正確な計算が出来る」「英語を自由自在に扱える」といった能力は、それ単体での価値は大きく下がり、「誰も思いつかないようなアイデアを閃く能力」の価値が広く再認識されるようになり、そのような能力を持つ人間の価値が現在以上に高騰すると考えます。大人だけでなく、子供もこの点に重点をおいて教育を施すべきです。
ただ「閃く能力」というのは、殆どが才能の領域なので、鍛えることも、またそんな能力を持っているかを判別することも難しいものです。「閃く能力を身に着けよう」といった教育も絵に描いた餅で終わります。そこで筆者は
「いいアイデアを閃くかどうかは分からないけど、一つのことを突き詰めて考え続ける能力」
があれば良いのではないかと考えています。「考え続ける」という作業は簡単なようで、なかなか出来る人は少ないのではないでしょうか?筆者も含めて、思考停止状態の人は、大人になればなるほど多いですね。
以上、近々「ハゲタカシリーズ」を再び映像化する機会がある場合、柴野建夫は、ぜひとも佐々木蔵之介さんに演じて欲しい、というお話でした。
参考 他のハゲタカシリーズの感想はこちら↓
この本を読むならこんな人
✔ 佐々木蔵之介さんのファン
✔ 青春ドラマとか好きな人
✔ エンジニアとして働く予定の人
✔ エンジニアとして働いている人
■作品;「ハゲタカ外伝 スパイラル」
■著者;真山仁
■種類;経済小説
■刊行;2015年7月
■版元;ダイヤモンド社