横尾宣政:「野村證券 第2事業法人部」を読んだ感想

「オレの数億、無駄にするな。立派になれよ」

※講談社 野村證券第2事業法人部 横尾宣政 P56より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

野村證券第2事業法人部

今回は、昨年出版された「野村證券第2事業法人部」の感想です。著者は野村證券の伝説の営業マンで、野村證券を退社した後は、オリンパスの巨額粉飾事件で名前が挙げられる横尾宣政氏。前半で著者の野村證券入社~野村證券での活躍、後半でオリンパス事件に関する当事者の暴露といった内容になっています。

筆者は金融や経済事件に詳しくないので、後半のオリンパス事件に関する部分に関する特段の感想はありません。ただ著者本人はあくまで無罪を主張されており、冤罪だったら大変に恐ろしいことだなと感じますが、やはり読みどころは、前半部分の野村證券での苦労話と活躍の回顧です。

超ブラックな職場環境

著者が大学を卒業して就職活動をする時期は、企業の採用意欲が非常に高く、内定者に逃げられないよう学生に対して過剰な接待が蔓延していたようです。筆者もバブル入社を経験した方にお話を聞くと、ホテルでの飲食や旅行など、現在では信じられないような待遇が実際にあったそうです。そんな中、著者は内定していた財閥系の銀行を蹴り、「清らかな会社」という思い込みで野村證券に入社しますが、配属になった金沢支店から始まった苛烈な職場環境が赤裸々に書かれています。

✔ とにかくノルマ達成至上主義。自社の利益のためなら、顧客が損をさせても全く問題ない

✔ 儲かるはずのない商品と分かっていながら、金融知識のない人間を狙い撃ち営業

✔ 職場での暴力は当たり前、電話機を投げつけられることも

✔ 始業の約2時間前から出勤し、夜中まで残業するが、もちろん残業代の多くは未払い

などなど、働き方改革が政策課題に上がる現在では、考えられない職場環境が述べられています。当時は採用から職場まで全く状況が違うことが新鮮です。ただし、ここまでひどい環境は野村證券が特別だったようで、著者の同期167名中69名が入社1年以内に退職したとのこと。1年間での離職率は驚異の41.4%

現在では問題となる証券取引

上記のようなブラックな環境でも、著者は工夫を重ね結果を出していきます。ただその手法が現在では、完全に問題となる手法もあったようです。

例えば本書では、「仕切り商い」と呼ばれる手法が紹介されています。証券会社があらかじめ顧客に売買させたい銘柄を決めておき、営業マンを総動員して、該当銘柄を売買させ、株価を吊り上げる方法のようです。以下、本書の解説を抜粋します。

こうした株の売買は「仕切り商い」とよばれ、例えば一方が1,000円なら、もう一方は1,050円というふうに、株価が同じ水準の銘柄が選ばれる。最初に両銘柄を同株数買っておき、仮に一方が30円値上がりすると、これを売ってもう一方を買い増す。すべての玉(証券業界用語で株式のこと)を野村が支配しているので、このパターンを一定期間くりかえすと両銘柄の株価は簡単に値上がりしていった。

※講談社 野村證券第2事業法人部 横尾宣政 P40より抜粋

この結果、株価の天井までつきあわされた顧客は、必ず損失が発生します。著者も多くの顧客をパンクさせたとのこと。。。

また、これ以外には、顧客へ発送された運用報告書を顧客の郵便ポストの前で待ち受け、顧客の手に渡らないように破り捨てるという暴挙も紹介されています。何千万円もの損失が記された運用報告書を隠蔽する目的だったそうです。

本当に昔は何でもありだったのですね。ちょっと感心してしまいます。昔と言っても、ここ40年ほど前のことなので、つい最近までといっても良いかも知れませんが。

このようなことが出来てしまえば、現在よりも遥かに簡単に利益を上げられるような気がしますね。よく問題にならなかったものです。

俺の数億無駄にするな

ここまでの記事では、著者は詐欺まがいの手法を使って、なりふり構わずノルマ達成に邁進してきたように見えてしまいますが、そもそも顧客に愛されていなければ、個人営業で長期的に結果を難しいと思います。それが最もよく表れているのが、本記事のタイトルです。

「俺の数億、無駄にするな。立派になれよ」

これは、著者が金沢支店から東京本社の第2事業法人部へ栄転する際に担当した社長さんからいただいた言葉だそうです。著者はこの社長さんに金融取引を通じで、数億円もの損失を被らせてなお、愛されていたことを示す言葉となっています。著者は大企業の財務部を顧客とする野村證券の花形部署である「事業法人部」でも、その手腕をいかんなく発揮し、大変な実績を上げますが、その全てが結果のためには手段を選ばない、強引な営業手法の成果とは思えません。たとえ取引先に損をさせても、決して嫌われない、むしろ愛される術を心得ていたと考えられます。その手法について語られた部分がないのが残念です。

筆者がここまで書いた内容で、本書の第1章部分となります。この後、事業法人部での活躍~野村證券退社~オリンパス事件~国税や検察の対決と、大変に濃い内容が続いていきますので、ぜひ本書を手にとってご確認下さい。

こういった大企業で活躍した人の自伝的な書籍では、自分の手柄話ばかりが語られ、何とも後味の悪い気持ちになったりするものですが、本書について、筆者はそんな感じは受けませんでした。むしろ無理なノルマを課されても潰れること無く、創意工夫を重ねノルマを達成するどころか、周囲の想定を遥かに上回る結果を出し続け、がむしゃらに働いた著者への敬意の念が湧いてきます。会ったことはありませんが。どんなに理不尽な状況におかれても、「いつか見てろよ」と絶対に潰されないことの大切さを教えてくれます。

以上、昔の営業マンは、オレオレ詐欺と大して変わらないかもしれないなぁ というお話でした。

この本を読むなら、こんな人

✔ 野村證券に内定している人

✔ 金融業界で働いている人

✔ 最近、仕事のモチベーションが低下している人

※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。

■作品;「野村證券 第2事業法人部」

■著者;横尾宣政

■種類;ビジネス書

■刊行;2017年2月

■版元;講談社

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