「動物にね『どうして生き残ったんですか』って訊(たず)ねてみてよ。絶対にこう答えるから『たまたまこうなった』って」

「動物にね『どうして生き残ったんですか』って訊(たず)ねてみてよ。絶対にこう答えるから『たまたまこうなった』って」

※Google Play book グラスホッパー 伊坂幸太郎著 より引用

珍しいアサガオを探し求める、セミとクジラと令嬢。いたる所に張られた伏線は、伏線であることすら気づかない、脱帽の設計と構成。

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

グラスホッパー

本作は伊坂幸太郎先生の、殺し屋シリーズ第1作です。筆者は、伊坂幸太郎の作品の中でも、この「殺し屋シリーズ」が大好きです。

本作は、依頼を受けて人を殺めることを生業とする、つまり殺し屋の話で、つまりありふれた設定なのですが、ありふれた作品でなくなっているのは、「殺し屋業界」の話になっている点だと思います。

業界:

殺し屋同士の対決とか、2大勢力の覇権争いとかではなく、自動車業界や通信業界などと同列に、「殺し屋業界」です。なので殺し屋業界には大手の会社もあれば、零細からフリーランスまで様々な事業者が存在します。

「人殺しに業界があって、どうすんだっつうの」

※Google Play book グラスホッパー 伊坂幸太郎著 より引用

本作の登場人物である、殺し屋「蝉」が発したセリフですが、読者の感想を代弁していますね。人殺しに業界って。。。業界が成立するには、それなりの需要があって、しっかりその需要に応えることが出来るソリューションの共有が不可欠です。まぁ需要の方は、それなりにありそうですが、むしろ供給の方が困難な気がします。本作では人殺しのスペシャリストが、何人か登場します。

✔ 刃物を使った殺人のエキスパート

✔ 催眠術のような不思議な力で、自殺に追い込む、人殺しの達人

✔ 人を自動車に轢かせる職人

などなど。まぁ刃物や自殺はいいとしても、自動車に轢かせるというのは、轢いた人にも迷惑がかかるので、いかがなものかと思いますが。。。このような人がたくさんいたら、「殺し屋業界」も立派に成立するだろうなぁ、とある意味リアルに考えることができます。

本作の序盤は、上記に登場する殺し屋の立場で、個別のストーリーが進行しますが、後半にかけて、それぞれのストーリーが交錯し、一つの結末に収束していきます。その際、序盤で張られた伏線(もはや伏線であることにすら気づきません)が見事に回収されていくため、「やられた感」が半端ではありません。記憶が曖昧ですが、筆者は本作を読んだのが、伊坂幸太郎さんの作品中2番目だったので、

伊坂幸太郎って、どんだけ頭いいの?

 となりました。ちなみに初めて読んだのは「アヒルと鴨のコインロッカー」だったと思います。

群衆相:

本作の作品名となっている「グラスホッパー」とはバッタの英名ですね。本作の登場人物である殺し屋「アサガオ」さんが、トノサマバッタの生体について、語る場面があります。

トノサマバッタと聞いてイメージするのは、緑色ですがアサガオさんは、緑ではないものもいると言います。密集したところで育つと、黒く、翅(はね)が長く、さらに凶暴になるそうです。これを「群衆相」と呼ぶようです。仲間がたくさんいるところで育つと、餌が足りなくなるから、別の芭蕉に行けるように飛翔力が高くなる理屈とのこと

これを人間に当てはめた考察が印象に残りました。

「俺は、バッタだけの話ではないと思う」

「何がですか?」

「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタ、だ」

「凶暴な飛びバッタですか」

「群衆相は大移動をして、あちこちのものを食い散らかす。仲間の死骸だって食う。同じトノサマバッタでも緑のやつとは大違いだ。人間もそうだ」

「人間?」急に、自分の名前が呼ばれたかのうような気分だ。

「人もごちゃごちゃしたところで、暮らしていたから、おかしくなる。人間は密集して暮らしている。通勤ラッシュや行楽地の渋滞なんて、感動ものだ。」

※Google Play book グラスホッパー 伊坂幸太郎著 より引用

アサガオさんは、殺し屋なのですが、大変に思慮深い人物です。確かに都市部と田舎では、そこに住む人間性に違いがあるように思います。都市部の人間は、自己主張が強く、せっかちな印象で、ひょっとしたら攻撃的な面も多いかもしれません。仲間がたくさんいると、自分が目立たなくなる、また美味しい餌も少なくなるので、強く主張し、早いレスポンスが必要になるからでしょうか。言えてるな、という感想です。

ちなみに著者の伊坂幸太郎さんは、仙台在住のようです。てっきり東京にお住まいかと思い込んでいましたが、ずっと仙台を拠点に生活されているとのこと。東京はさぞかし「群衆相」に見えることでしょうね。

筆者は田舎、東京の両方で生活したことがありますが、、、、、やっぱ、東京がいいなぁと思います。

結局、最後は運なんだってば

この記事のタイトルとなっている、生き残った動物に「生き残ることが出来た秘訣はなんですか?」と聞いたら「たまたまだよ」と答えるさ~、というセリフは、本作「グラスホッパー」の主人公の奥さんが言ったセリフです。

筆者はこの奥さんの考え方が大好きで、記事のタイトルにもしました。

筆者も自分で振り返ってみると、失敗したことの原因は分かりやすいのですが、うまくいったことの原因は「いや、何かたまたまこうなったんだよな」ということが多いです。成功体験はあまり多くないので、本当は違うのかもしれませんが、成功者に「成功の秘訣はなんですか?」と訊ねても、

いろいろあるけど、最終的には運が良かった

的な結論に収まるような気がします。結局、最後は運なんだってば!

ここで大切なのは、「たまたま生き残った」と答える動物も、「運が良かった」と答える成功者も、必死で努力をしていたということです。生き残るために、成功するために最善と考えられる選択を続けてきた。そこに「運」が重なって結果が出た、ということですね。

✕ 結局、最後は運だから、努力なんかムダじゃん

報われるかどうかは運しだいだが、努力をしなくていい理由にはならない

なんともせちがらく、モチベーションが落ちますが、筆者が本作から得た教訓は、こんな感じです。

以上、努力抜きの運だけで大きな富を得るには、「宝くじ」しかないな、というお話でした。

この本を読むなら、こんな人

✔ 公私どちらか、もしくは両方で嫌なことがあり、仕返しを考えている人

✔ 仕事上の悩みがあって、幻覚や幻聴が出始めた、もしくは体に変調をきたしている人

✔ 自由になりたい!と強く思っている人

※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。

■作品;「グラスホッパー」

■著者;伊坂幸太郎

■種類;ミステリー

■刊行;2010年2月

■版元;角川文庫

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