「殺人を許したら、国家が困るんだよ」

「殺人を許したら、国家が困るんだよ」

※Google Play book マリアビートル 伊坂幸太郎著 より引用

蜜柑と檸檬の甘い匂いにつられた天道虫が迷い込んだのは、王子様が乗る東北新幹線。多様な価値観の衝突が生む火花。

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

マリアビートル

本作は伊坂幸太郎先生の人気シリーズ、殺し屋シリーズの2作目です。言わずと知れた人気作家の人気シリーズで、1作目の「グラスホッパー」は映画化もされているので、ご存知の方も多いかと思います。

参考 グラスホッパーの紹介記事はこちら↓

珍しいアサガオを探し求める、セミとクジラと令嬢。いたる所に張られた伏線は、伏線であることすら気づかない、脱帽の設計と構成。伊坂幸太郎:グラスホッパーの感想を書いています。

筆者は伊坂幸太郎先生の作品が大好きなので、多くの作品を読みました。著者の作品をそれと特徴つけているのは、やはり、その「タッチ」でしょうか。何とも言えず軽妙かつユーモラスな筆致は、文字が踊っているような感じがします。それでいて、読者の想定を大きく超える組み立てにより、伏線を余すこと無く回収して一気に収束する結末は、

「そうくるのか~」

と唸らされ、ぐぅの音も出ません。ファンになりますね、これは。

ちなみに、、、

参考 3作目「AX(アックス)」の記事はこちら↓

人生のリセットは認められるか?大きな力と対峙する1人の殺し屋が振るう、蟷螂の斧が届くことを祈らずにはいられない。伊坂幸太郎「AX(アックス)」の感想です。

全てのルールは国家のためにある?

冒頭のセリフは、本作の登場人物である中学生が、塾の講師に対して

どうして人を殺してはいけないのか?

という問いに対する答えです。以下、本文の解説は続きます。

たとえば、自分は明日、誰かに殺されるかもしれない、となったら、人間は経済活動に従事できない。そもそも、所有権を保護しなくては経済は成り立たないんだ。そうだろう?自分で買ったものが自分の物と保証されないんだったら、誰もお金を使わない。そもそも、お金だって、自分の物とは言えなくなってしまう。そして、『命』は自分の所有しているもっとも重要なものだ。そう考えれば、まずは、命を保護しなくては、少なくとも命を保護するふりをしなくては、経済活動が止まってしまうんだ。だからね、国家が禁止事項を作ったんだよ。殺人禁止のルールは、その一つだ。重要なものの一つ。そう考えれば、戦争と死刑が許される理由も簡単だ。それは国家の都合で、行われるものだからだよ。問題なし、と認めたものだけが許される。そこに倫理は関係ない。

※電子版Kindle マリアビートル 伊坂幸太郎著 より引用

筆者も子供の頃に「なぜ戦争で人を殺しても良いのに、殺人は罪に問われるのか?」と疑問に思ったことがあるますが、この回答が100点だと思いました。

学校では人間の命が最も尊いと教えられます。もちろん両親からも教えられます。一つしかない命は最も重要だと。だから基本的に事物の価値を判断する時、「人命が最重要」が前提となってしまうので、いくら考えても「戦時の殺人はOKで、平時の殺人はNG」に対する解が得られません。では、

人命は最重要ではない。実は人命よりも大切なものがある

場合はどうでしょうか。その人命よりも大切なもののために、時と場合により殺人が許されたり、許されなかったりしても不思議ではありません。本作は

人命より大切なもの=国家である

と言っています。学校で「人命が最重要」と教えるのは、その方が国家にとって都合がいいからとなります。その他の法律、政令、行政と議会によって定められたあらゆるルールも然りです。腑に落ちます。

ただし、勘違いをしてはならない部分は、国家が人命より重要なものだとしても、人命の尊さが損なわれるわけではないことですね。一番が二番になっただけで、かけがえのないものであり、決して粗末にしてはならないものである事実は、全く動きません。

国家とは何か?

これは辞典やウィキペディアあたりで調べれば出てくると思います。国境で区切られた政治的集合体とかですね。

筆者は

人間という種の保存を目的とした時に、人間が考案した、現時点で最も有効なシステム

と考えます。

つまり人間全体を、長きに渡り存続させるためには国家が必要で、国家というシステムが揺らぐと、人間全体の存続が危うくなる。従って人間全体のためならば、ある少数の人命が犠牲になることも致し方ない。少数の人命のために、人間全体の存続を危うくすることは出来ない。となります。

何となく書いているうちに、筆者もよく分からなくなって来ましたが、恐らく子供の頃に、誰もが抱いたであろう疑問の答えが見つかって、スッキリした。というお話でした。

この本を読むなら、こんな人

✔ 近々、東北新幹線に乗車する予定がある人

✔ 自分はあまり「ツイてない」と思う人

✔ 機関車トーマスをこよなく愛している人

※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。

■作品;「マリアビートル」

■著者;伊坂幸太郎

■種類;ミステリー

■刊行;2013年9月

■版元;角川文庫

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