「永世七冠 羽生善治」を読んだ感想と羽生さんの強さについて。

羽生も同じです。彼は「勝利の女神」と浮気をしている。女性ならみんな気づいていることです。羽生に勝つためには、まずそこを分かっておかなければなりませんね。

※宝島社 永世七冠 羽生善治 P194より引用

頂点に立つ者の中でも、更に選ばれたものだけが名乗ることを許される「史上最強」。前人未到の永世七冠を獲得した、羽生善治の奇跡の軌跡。

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

永世七冠 羽生善治

本書は、2017年の年末に将棋の最高峰タイトルである竜王を獲得し、将棋界の7つのタイトルで永世位を獲得した、羽生善治さんの軌跡をまとめた書籍です。筆者は将棋が大好きで、今は止めてしまいましたが、2年ほど前まで「将棋世界」という月刊誌を定期購読し愛読していました。ちなみに最も好きな棋士は羽生さんです。ファンと言っても差し支えないかと思います。

タイトル戦:

さて、各種報道で十分に説明されていますが、まずは将棋のタイトルについて書いておきます。

将棋には、ゴルフのマスターズや、テニスのウインブルドンのように、優勝やタイトルを争奪するトーナメントやリーグ戦(棋戦)が設けられています。その中でタイトル戦と呼ばれるものは、2018年5月現在で「竜王」「名人」「叡王」「王位」「王座」「棋王」「王将」「棋聖」の8つがあり、各棋戦を制した棋士は一年間、そのタイトル称号を名乗ることが出来ます。例えば「羽生竜王」という具合ですね。ゴルフのマスターズなどと違うところは、一度タイトルを獲得した場合は、翌年のトーナメントやリーグ戦の参加は免除され、それぞれの棋戦を勝ち抜いた棋士からの挑戦を受ける形になります。これはボクシングのチャンピオンの様な扱いです。なのでタイトル戦で行われるトーナメントやリーグ戦は「挑戦者決定戦」という位置づけになりますね。

最終的に、タイトル在位者とリーグ戦やトーナメントを勝ち上がった挑戦者が、番勝負と呼ばれる「5番勝負」や「7番勝負」を行い、先に3回もしくは4回勝利したほうが、その年のタイトル保持者となります。番勝負には1局を1日で終わらせるものと、1局を2日間に渡って指し次ぐものがあります。

※タイトル戦のほかには、テニスのウインブルドンのように、前年の優勝者も含めてトーナメントを行う棋戦もあります。毎週日曜日にNHKの教育チャンネルで放送される「NHK杯」がよく知られています。

なお、8つのタイトルの内、「竜王」「名人」の2つは別格とされますが、全てのプロ棋士は上記の8つのタイトルの内、どれかをもしくは複数、あわよくば全て獲得することを目標に日々努力しているわけです。

永世位:

将棋の棋戦では同一の棋戦で、ある一定の回数が規定されており、その回数を上回る数を獲得すると永世称号が与えられます。例外を除き、永世称号は引退後に名乗ることを許されます。呼称はそれぞれの棋戦(タイトル)によって異なり、タイトル名の前に「永世」を冠するものや、「名誉」を冠するもの、永世位を獲得した順に「◯世」をつけるものがあります。例えば「羽生永世竜王」「羽生19世名人」「羽生名誉王座」という具合です。

永世位の規定

各棋戦の規定は以下の通りです。連続と通算のどちらか、もしくは両方の規定があります。

✔ 竜王・・・連続5回、もしくは通算7回

✔ 名人・・・通算5回

✔ 叡王・・・規定なし

✔ 王位・・・連続5回、もしくは通算10回

✔ 王座・・・連続5回、もしくは通算10回

✔ 棋王・・・連続5回

✔ 王将・・・通算10回

✔ 棋聖・・・通算5回

※タイトル戦ではありませんが、先述したTV中継のあるトーナメントNHK杯も通算10回優勝という規定をクリアすると「名誉NKH杯」という称号が与えられます。筆者は、各称号の中で最難関は、毎年全棋士参加のトーナメントを勝ち抜く必要があり、1つの負けも許されないのに、10回も優勝しなければならない「名誉NHK杯」ではないかと考えています。ちなみに名誉NHK杯の資格を保持しているのは、将棋の歴史上でも羽生善治さん1人です。

永世称号の資格保持者

テニスのウインブルドンや全豪・全仏・全米などで優勝出来ないプレーヤーの方が圧倒的多数であるように、将棋のタイトルも生涯を通して一度も獲得できない棋士の方が多いです。更に同一タイトルを複数回獲得する必要がある永世位となると、ほとんど不可能で、現役棋士で羽生善治さん以外に永世位の資格を有しているのは、

✔ 渡辺明・・・・永世竜王/永世棋王

✔ 谷川浩司・・・17世名人

✔ 森内俊之・・・18世名人

✔ 佐藤康光・・・永世棋聖

の4名です。歴史上でも木村義雄・大山康晴・中原誠・米長邦雄の4名を加えるのみで、どれだけ困難であるかがよくわかります。

※塚田正夫さんが「永世九段(後に永世十段)」を獲得していますが、現在無くなったタイトルなのでカウントしていません。

で、羽生善治さんは2017年の竜王獲得で「永世位」全ての称号資格の規定をクリアしたということです。国民栄誉賞の贈呈も納得ですね。

彼は「勝利の女神」と浮気をしている

本記事のタイトルは、亡くなられた米長邦雄永世棋聖・元将棋連盟会長の言葉です。本書は羽生善治さんの永世七冠を獲得するまでの軌跡を、本人の対談(過去のものも含む)や関係者の取材で構成されているため、筆者のように「羽生ファン」であり、将棋世界を定期購読していたような人は、既に知っている情報ばかりです。ただ、この米長邦雄さんが羽生善治さんについて書いた章は「おとなの色気」を感じさせる名文で、一読の価値があると思います。

以下、冒頭の引用につながる部分を抜粋します。

「もし、羽生を倒す人が出てくるとしたら・・・・おそらく、羽生以上にメリハリのついた人間であって、将棋の神様に愛されるタイプの棋士だと思いますね。

将棋の神様が女性だというのはご存知でしょうか。

「あたなは私のことをどうするの?」

将棋の神様は常にそう問いかけてくるのです。

そこで愛しているのか、もう興味がなくなったのか、ビシッとした態度を取れる人間でなければ、将棋の神様も、本当にこの人に白星をやって良いのか迷ってしまいます。

※宝島社 永世七冠 羽生善治 P193~194より抜粋

この続きで、「彼は『勝利の女神と浮気をしている』~」と続くわけです。

米長邦夫さんは羽生善治さんを、常に自身に関係のある、もしくは興味のある物事を深く考察し、明確な自分の考えを持っている稀有な人間と述べています。そしてそのスタンスこそが長期に渡りNO1に君臨し続けることを可能にする要素の1つだと分析しています。

これだけ著名な人物なので、羽生善治論は各人各様なのでしょうが、筆者はどんな偉業を達成しても、常に自然体でメディアに登場する姿に憧れます。まったく力みがないんですね。

「え~、まぁ~」とか言ってますし。ニコニコしてますし。さすがに若い頃のように寝癖は見られなくなりましたが。

これも自身を取り巻く物事に対する考えが明確であり、迷いがないために自然体でいられるのかと思ったりしました。

以上、勝利の女神と浮気ができない女性の場合は、勝負事をどう進めればいいのかな?と考えたりもする、というお話でした。

参考 羽生善治さんに関する他の記事はこちら↓

全てを手に入れたように見える天才棋士。まばゆいスポットライトを浴びる中で、考えていたこと。羽生善治著 決断力の感想です。
天才の中の天才が観る景色。天才棋士 羽生善治 2011年時点の視界。羽生善治著 大局観 自分と戦って負けない心を読んだ感想を書いています。

■書名;「永世七冠 羽生善治」

■著者;羽生善治

■刊行;2018年3月

■版元;宝島社

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