羽生善治:「決断力」を読んだ感想と、情報の取捨選択について。

私は本当に真っ暗闇の道を一人で歩き続けている気持ちだった。

※角川oneテーマ21 決断力 羽生善治著 P6より引用

全てを手に入れたように見える天才棋士。まばゆいスポットライトを浴びる中で、考えていたこと。

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

決断力

本書は2005年に、将棋のプロ棋士である羽生善治さんによる著作です。「永世七冠 羽生善治」の繰り返しになりますが、筆者は羽生さんのファンです。

参考 「永世七冠 羽生善治の記事」はこちら↓

頂点に立つ者の中でも、更に選ばれたものだけが名乗ることを許される「史上最強」。前人未到の永世七冠を獲得した、羽生善治の奇跡の軌跡。永世七冠 羽生善治を読んだ感想を書いています。

羽生さんと言えば、史上初の将棋7大タイトルを制覇した「七冠達成」した実績が多くの人に知られています。七冠達成は1996年(1995年度)のことですから、ちょうど七冠達成の10年後に書かれた書籍です。2005年の羽生さんの立ち位置は、大記録を達成した後も燃え尽きること無く、複数のタイトルを獲得・防衛し誰もが認める、将棋界の第一人者としての地位を揺るぎないものとした地点と言えるでしょう。

情報は「選ぶ」より「いかに捨てるか」が重要:

2005年というと、インターネットが爆発的に普及し始めた時代ですね。今やWEB広告の最もポピュラーな手法であるリスティング広告が本格的に様々な事業社に利用され始めたり、サイバーエージェントがアメブロのサービスを開始したのも、このあたりの年代だったと思います。

ご存知の通りインターネットがもたらしたものは「情報革命」です。情報伝達のコストが圧倒的に低くなり、様々な情報が広く速く一般にも広まるようになりました。筆者も当時、情報が反乱する中で「いかに情報を集めることが出来るか?」がビジネスにおいて、更に重要になると考えていた記憶しています。まぁ昔からビジネスの肝は「情報」であることに変わりはないのですが、当時は若かったので。。。

ところが、羽生さんの視点は違います。情報を誰でも手に入れることが出来るため、なるべく多く情報を集めることよりも、集めた情報を分析しなければ意味がない。しかし、分析しても何も得るものがない情報では、時間の無駄になってしまうので、分析する情報はしっかり取捨選択をしなければならない。その際、「選ぶ」ではなく「捨てる」ことが重要と述べています。

さすがの洞察だと思いますね。

情報を「選ぶ」と「捨てる」の違い:

筆者には、情報を「選ぶ」と「捨てる」の違いがイマイチよく分からないのです。選ぶというのは、たくさんある情報の中から、様々な理由あるいは勘で情報を選択する行為。捨てるというのは、消去法で選ぶ情報を残す行為で、結局どちらも情報を取捨選択する行為になるからです。

「選ぶ」「捨てる」の違いを敢えて見つけるとすると、残る情報の量と精度かもしれません。「選ぶ」行為においては、必ず一つは選択があるのに対し、「捨てる」行為では「全部捨てる」ということも起こり得ます。更にその逆もあり、「捨てる」行為では、たくさんの選択肢が残ることも起こり得ます。

筆者の解釈では「選ぶ」と「捨てる」の違いは、情報の取捨選択において「捨てる」方が、やや精度の高い選定ができるのかと考えています。

超トップの苦悩:「真っ暗闇の道を一人で歩き続けている気持ちだった。」

本記事の冒頭で紹介している、「真っ暗闇の道を一人で歩き続けている気持ちだった」という記述は、本書の冒頭「はじめに」に出てきます。

羽生さん著書は多数ありますが、物事に対する前向きな考え方を示すものが多く、過去の苦労話は少ないため、このように苦悩を吐露するような文章は大変に珍しいのではないかと思います。逆に言えば、本当に苦しかった時期なのでしょう。

これは、羽生さんが七冠制覇を達成する前、1994年「名人」のタイトルに挑戦していた時期を振り返ってのものです。当時「名人」のタイトルを保持していたのは、後の将棋連盟会長:米長邦雄先生。2012年に亡くなられましたが、週刊誌にもコラムを持ち、姿もさわやかで人気・実力ともに間違いなくトップクラスの棋士でした。

羽生さんが名人に挑戦する前年に、念願だった名人位を獲得し、当時50歳だった米長さんは、史上最年長で名人位を奪取した棋士として「中年の星」と言われていた覚えがあります。また、当時の羽生さんは23歳で、いわゆる「上座事件」を起こし、物議を醸していました。上座事件については、本書の冒頭でも触れられていますが、礼を重んじる将棋界において、対局時に格上の棋士が上座に座るのが礼儀とされています。当時、羽生さんは竜王という棋界最上位のタイトルホルダーでしたので、全ての対局で上座に座っても問題なかったと思うのですが、やはり「若輩者が大先輩に上座を譲らず、無礼だ」とのバッシングを受けていました。

つまり当時の世間の風は、米長さん=フォロー/羽生さん=アゲインストで、かなり強く吹いていたようです。

メディアに出る際は、いつも飄々としているため、順風満帆に棋士としての人生を歩み、才能一つで成功者の地位を築いたように見えますが、やはり苦悩はあるものですね。

これは選ばれし者の苦悩なので、平均的な筆者がここから汲み取る教訓は特にありませんが、やはりこれほどの才能の持ち主でも苦悩はあるのだな、と。筆者が色々なことで悩みを抱えるのは当然だな、と。変な納得とともに、現実を受け入れる心境になりました。いや、ものすごく深い悩みがあるわけではありませんが。

以上、やっぱり羽生さんは神だな、でも羽生さんでも悩むことはあるのだな、意外だったな、というお話でした。

■書名;「決断力」

■著者;羽生善治

■刊行;2005年5月

■版元;角川書店

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