真山仁:「ハゲタカⅡ バイアウト」を読んだ感想。「名門企業」とは何かを少し考えてみました。

 

「名門とは、そんなに大事なものなんでしょうか。それを守るためなら、我々新興企業はいくらでも犠牲になれと言わんばかりですよ」

※講談社文庫 ハゲタカⅡ(上) 真山仁著 P234より引用。

 

 「名門企業」とは、数少ない宝箱を携える選ばれし者か、開けてはならないパンドラの箱を抱えた妖怪か

 

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

 

バイアウト(ハゲタカⅡ)について

真山仁先生のデビュー作「ハゲタカ」の続編です。

参考「ハゲタカ」についての記事はこちら↓

バブルの玉が爆ぜる音、諸行無常の響きあり。財務諸表の赤の色、盛者必衰の理をあらは(わ)す。絶えず変化する経済食物連鎖を支配する頂点捕食者は正義か悪か。 読書日記です。「ハゲタカ」を読んだ感想を書いています。

 

前作では、バブル崩壊後の闇にスポットが当たっており、比較的公開情報の少ない、株式未公開企業の買収がメインとなっていました。

本作では、東証一部上場企業の買収、しかも「名門」と呼ばれる事業会社の買収を取り扱っており、作品のスケールが1段階アップしています。

事業規模・知名度ともに日本を代表する企業であり「名門」と呼ばれる企業と、同じく事業規模・知名度ともに日本を代表する企業ではあるが「名門」とはされない企業を対比させ、その違いを通して「名門企業」とは何か?を浮き上がらせています。

堕落と革新、様々な確度で描かれる対立

「名門」という立場に胡座をかき、裸の王様と化した経営陣

「名門」ゆえに、絶対に潰れることはないという安心感から、仕事へのモチベーションが低下した一般社員

多くの役員が自らの立場を守ることに汲々とする中、自分を犠牲にしてでも社員の雇用と将来を守ろうと孤軍奮闘する社長

企業としての実力や勢いでは「名門」を大きく凌駕しながらも、実態のない「名門」という“何か”に苦戦を強いられる新興企業

前作でもテーマとなっていた「会社とは誰のものか?」を、個人・事業法人の両面からの新旧対決で更に掘り下げています。

 

✔ 引き際を知らず、いつまでも会社にのさばる老害経営者に対しての怒り

✔ 自らを顧みず経営者としての使命を全うしようとする若き社長への感動

✔ 新旧対決の渦中にあって、最善の道を見つけ突き進む主人公への羨望

 

「そんな奴いるの?」と言いたくなる程に優秀な、主人公を支えるチームも健在で、前作の読者はもちろん、本作から読んでも様々な感情が湧いてきて十分に楽しめる作品です。

 

 

名門企業の正体

 

「名門」とは何でしょうか?

✔ 昔から有名な、もしくは社会的地位が高い人物を多数排出している

✔ 昔から有名な、もしくは社会的地位が高い人物が多数利用している

つまり、過去の実績から名前だけで多くの人の信用を集めることが出来る、由緒正しきものやこと、のことですね。

家系=名門の家系。学校=名門校、クラブチーム=名門クラブなどでよく耳にします。またゴルフコースやバーに付けられることもあります。

これら「名門○◯」と「名門企業」では、決定的に異なる部分があるように思います。それは動かすお金の大きさです。

 

※以下は、本書を読んでの想像なので、何か裏付けがあるわけではありません。

名門企業と呼ばれる事業者は、日本を代表する事業者ですから、学校やクラブチームと比べて、巨額の資金が動きます。そして巨額の資金の通り道には、必ず利権が生まれます。利権とは甘い汁なので、一度手に入れると、どんなことをしても手放すことが出来ません。また、そのような誰もが欲しがるものは、だいたい国家が優先的に獲得します。この場合の国家とは、政治家や官僚のことです。

以前、衆議院選挙で自民党が予想以上の大勝をした際、かなり名簿順位の低い候補まで、比例代表で当選したことがありました。彼は与党大勝のシンボルとして、当時良くテレビに出演しましたが、国会議員の待遇を赤裸々に話し、ベテランの先生達を慌てさせたことがありました。確かに国会議員の待遇は、かなり良いと感じます。これに対して批判的な意見も多いのでしょう。しかし、国会とは国の最高機関ですから、一般人と同じ待遇とはいかないのではないでしょうか?せめて、東証一部上場企業の社長くらいの待遇はあって良いと思います。

ただ、政治家のメリットは東証一部上場企業の社長と同程度の待遇ではなく、いち早く利権を察知でき、利権に食い込むことができることにあります。ここが一番おいしいのです

そしてその利権を提供してきたのが、いわゆる名門企業です。

 

■ 政治家・官僚などが利用し、また逆に利用され、持ちつ持たれつでやってきた事業者。

■ 国の成長を支えたことは、紛れもない事実ですか、決して表に出すことが出来ない闇を抱えた会社

■ それ故に権力者(国家)からも守られる会社。

 

それが名門企業の正体と考えられます。

もちろん名門企業と呼ばれる会社が全て、そうだとは限りません。

国の発展に比類なき貢献をしてきた事実は、衆目の一致するところであり、ここで書いたことは、本書を読んでの空想に過ぎません。

ただ本書を読むと、さもありなん、となります。

参考 ハゲタカシリーズの他の記事はこちら↓

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この本を読むなら、こんな人

金融に興味のある人

✔ 海外で働いてみたい人(特にアメリカ東海岸

金儲けが上手くなりたい人

✔ 世界で一番、金儲けがうまくなった気になりたい人。

※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。

 

 

■作品;「ハゲタカⅡ(上・下)」

■著者;真山仁

■種類;経済小説

■刊行;2013年6月

■版元;講談社文庫

 

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