真山仁:「ハゲタカ 2.5 ハーディ」を読んだ感想と、ラグジュアリー・リゾートについて考えてみた。

愛国心は大切です。でも、その志が殺戮しか生まないのであれば、私は愛国心を捨てて、愛を取りたいと思います。

※講談社文庫 ハゲタカ2.5 ハーディ(下) 真山仁著 P303より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

ハゲタカ2.5 ハーディ

本作は真山仁先生の大ヒットシリーズ「ハゲタカ」の6作目に当たります。タイトルが「ハゲタカ2.5」となっているのは、ハゲタカシリーズ中の時間軸で、ハゲタカⅡ「バイアウト」~ハゲタカⅢ「レッドゾーン」の間に当たる期間を描いた作品だからだと思います。

1.「ハゲタカ」舞台は1997~2004年

2.「バイアウト(ハゲタカⅡ)」舞台は2004~2006年

→こここが本作:ハゲタカ2.5 ハーディ

3.「レッドゾーン(ハゲタカⅢ)」舞台は2007~2008年

4.「グリード(ハゲタカⅣ)」舞台は2005~2008年

多くのハゲタカ作品とは趣が異なり、ハゲタカ外伝「スパイラル」と同様、スピンアウト作品という位置づけが正しいかと思いました。

通常のハゲタカシリーズでは、天才買収者の主人公、鷲巣政彦の活躍を描いていますが、「ハゲタカ2.5 ハーディ」では、本シリーズのヒロインである松平貴子を中心としたストーリーになっています。

過去のハゲタカシリーズは、企業買収もしくは企業再生を主軸に展開するため、高度な金融技術やハードな交渉と戦略を用いたバトルが最大の魅力でした。しかし、本作の主人公である松平貴子の設定が、どちらかというと「助けてもらう側」設定だったからか、上記の要素は大きく縮小されています。「サスペンス」もう少し言うと「スパイ小説」と言った方がいいかもしれません。もちろんエンタメ小説として十分に楽しめる作品ですが、「今度の鷲巣政彦は、どんな活躍をするのだろう?」といったモチベーションで読むと、やや肩透かしを喰うことになります。

また、ストーリーは多方面へ展開していきますが、最後の収束がやや強引な印象があり、まとまりきっていない感は否めませんでした。筆者は、企業を舞台に才能あるビジネスマンがデッドヒートを繰り広げ、手に汗をかく展開から、主人公である鷲津政彦がライバルをまとめて蹴落とすーーーみたいな話を期待していたので、正直少し残念でした。

繰り返しますが、ハゲタカシリーズとしては異色と感じますが、エンタメ小説としては十分におもしろい作品です。

ラグジュアリー・リゾート

本作では、松平貴子が代表を務める「ミカドホテル」を傘下に収めた、世界的リゾートグループ「リゾルテ・ドゥ・ビーナス」が主な舞台となります。

筆者は本書を読みながら、ラグジュアリー・リゾートってなんなのか?なぜラグジュアリー・リゾートに憧れるのか?と考えていたので、以下にまとめて見たいと思います。

プレミアム感による自己肯定と人間関係からの開放:

大変に残念なことですが、筆者は「ラグジュアリー・リゾート」と言われる場所は行ったことがありません。たぶんこれからも縁がないような気がしています。なので想像でしかないのですが、おそらくラグジュアリー・リゾートとは、すばらしい景観と気象条件の良い立地に作られた超高級ホテルのことだと思います。

プレミアム感による自己肯定:

こういった場所はその価格から誰でも利用できるわけではないでしょう。いわゆるセレブと言われる方々が利用し、施設もセレブが利用することを想定して建設されていると思います。つまり当該施設を利用するだけで「選民」という意識を持つことができます。「周囲と比較して自分は成功者である」事実を確かめることが出来るということです。これは気分が良いことでしょう。

人間関係からの開放:

セレブの生活がどんなものか、筆者は知りませんが、おそらくは普段の活動拠点から離れた場所にあるラグジュアリー・リゾートを利用するのではないでしょうか。これは、日常生活の人間関係から開放される欲求を満たすためと考えられます。

人間関係からの開放は、セレブリティに限らず、筆者のような一般庶民も旅行に出かける際の目的にも当てはまりますね。意識的/無意識的の別はあると思いますが、日常生活から離れた空間でリラックスしたいという目的は必ずあると思われます。

大自然による競争意識の浄化:

ラグジュアリー・リゾートと呼ばれる施設がある場所の多くは、海辺や湖、山など大自然と隣接立地が多いのではないでしょうか。

よく自然に「心を洗われる」という表現を使いますが、特に都市部で生活している人間ほど、自然に触れると気分が良くなるものです。

「自然の大きさに比べて、人間とはなんと小さい存在なのか、抱えている悩み事などとるに足らないことに思えた」

みたいな表現も良く見ます。

巨大なビルやテーマパーク、施設などの人工物は、全て他人が作ったものです。人気のある施設などであれば、その施設のオーナーは「成功者」であることが容易に想像できます。しかし「大自然」は人が作ったものではありません。ビル・ゲイツ/ジェフ・ベゾス/ウォーレン・バフェット/マーク・ザッカーバーグ/孫正義、世界には比類なき成功を収め、莫大な富を築いた偉人が何人も実在していますが、先に上げた人達でさえ、大自然を作ることはできません

かなり回りくどい表現となってしまいましたが、人間が大自然を見て、もしくは体験して心の安らぎを得るのは、誰かに作られたものではないため、誰かを贔屓ことがなく、日常の競争を忘れることが出来るからだと考えられます。

愛国心

本記事の冒頭で紹介しているのは、ハゲタカ2.5ハーディの主人公である松平貴子の祖母が送った手紙にあった文章です。

松平貴子は30代の女性(頭脳明晰かつ相当の美人と思われます)で、その祖母となるため、太平洋戦争前からホテル運営をしていた人物となります。現在とは愛国心の強さは桁違いだったことでしょう。

しかし環境はインターネットの発展とともに劇的に変わり、愛国心にも変化が生じているように思います。大きくは

✔ インターネットの発展前=国際市場での競争環境は国単位

✔ インターネットの発展後=国際市場での競争環境は企業単位もしくは個人単位

となってきました。例えば、日本が豊かになる=日本人も豊かになる、という構図が完全に成立していましたが、2018年現在、この構図に綻びが生まれています。企業単位もしくは個人単位でも市場で活躍できる環境が整ったためです。こうなると愛国心も当然、徐々に低下していくものと考えられます。特に日本のように将来の成長性が低い、むしろ衰退する可能性が高い国ではより顕著に低下していくと予想されます。

ちょっとまとまりのない記事になってしまいましたが、ラグジュアリー・リゾートに1ヶ月くらい滞在してみたい~というお話でした。

参考ハゲタカシリーズの他の記事はこちら

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■作品;「ハゲタカ2.5 ハーディ(上・下)」

■著者;真山仁

■種類;小説

■刊行;2017年11月

■版元;講談社文庫

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