藤沢数希:「外資系金融の終わり」を読んで、投資銀行について考えてみた。

社会人3年目で日本の上場企業の社長よりもちょっと上くらいの年収になっていた。

※ダイヤモンド社 外資系金融の終わり 藤沢数希 P225より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

外資系金融の終わり

本書は藤沢数希さんによる、主にリーマンショック前後の世界経済と金融機関との関わりをまとめた書籍です。著者は、外資系金融機関にトレーダーとして勤めながら人気ブログ「金融日記」を運営しており、本書以外にも多数の著書があります。筆者も本書以外に2冊ほど読んでいますが、ちょっと難解な内容を、軽やかで読みやすい文体でまとめられており、すぐに読みえ終えてしまいました。

なので「世界経済と金融機関との関わり」と言うと、以下にも学術的で読むのに時間がかかるイメージとなりますが、全くそんなことはなく、エリートビジネスマンがハレンチ接待を繰り返したり、下心ありありのデートに関する出費について同僚のトレーダーと真剣に議論するなど、どちらかというと下世話な話題がふんだんに盛り込まれているので、大変楽しく読み終えることが出来ました。

特に、リーマンショック前のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズ、メリル・リンチ、ベア・スターンズに代表される、外資系投資銀行の待遇や勤務状況、問題点が赤裸々に書かれており、これらの企業に就職を希望するエリート諸君は、参考までにぜひ読んで置かれることをお勧めします。だたし、リーマンショック後は、上記の投資銀行は全て無くなるか、救済合併、業態変更を強いられており、状況は激変しているので、実務の役には立たないものと考えられるので、あくまで参考に留めておく必要があります。

筆者が興味を持ったのは、外資系投資銀行内の職種についてなので、メモかわりに下記にまとめておきます。

平均年収7,000万のサラリーマンが務める会社:

本書の始めの方に出てくる衝撃の数字です。これはゴールドマン・サックスが2006年~2007年に支給した全社員の平均賃金となります。ちなみに当時のゴールドマン・サックスの従業員はグローバルで約3万人ほどとのこと。それで、7000万って。。。。

もちろん、全員が全員7000万円の年収を手にしていたわけではなく、様々な職種で給与格差はあり、当時のCEOであるロイド・ブランクファインの報酬が約80億だったり、更に歩合給のトレーダーとかは、CEOよりも上の100億以上のボーナスをもらっている人もいたと書いてあるので、社員給与の中央値が7000万ではないでしょう。上記にある数十億、100億以上の報酬があったトップマネジメントやトップトレーダーが、大きく平均値を引き上げているはずです。それでも単純計算で7000万×3万人=2,100億が人件費に当てられているため、大半の人が数千万の年収を得ていたと考えられます。なんとも羨ましい限りです。

投資銀行部門:

高級スーツに身を包み、六本木あたりでブイブイ言わせている、一般的にイメージされる「外資家当金銀行勤務のエリートサラリーマン」は、この部門の方々のようです。年金基金などの機関投資家へのアドバイザリー業務や、大企業の増資・M&Aなどのファイナンスおよびアドバイザリーが主な業務となります。真山仁先生の「ハゲタカ」に出てくるリン・ハットフォードなんかが当てはまりますね。まだ階級が低い時には、1日18~20時間EXCELを眺め操作したり、上司の指示で延々パワーポイントを修正しても発狂しない才能が求められる能力らしいです。また本書では興味深いことに、素人キャバクラの運営も大切な業務に加わったと書かれており、ここについては、本書を読んでいただくことをお勧めします。

マーケット部門:

証券や債権をはじめとする、様々な金融商品の売買を行うセクションです。投資銀行のトレーダーには2種類あり、自社勘定で相場を張る、つまり会社のお金で金融商品を売買し収益を上げるプロップトレーダーと、顧客の注文をそのままこなすエージェンシートレーダーとなります。どちらが偉いのかというと、当然プロップトレーダーで、先に書いたCEO以上の100億円ボーナスをもらうのもの、このプロップトレーダーだそうです。本書の著者もプロップトレーダーだったとのこと。勤務時間は朝こそ早いそうですが、マーケットが閉まると基本的には業務も終了となるため、投資銀行部門のような長時間勤務にはならないようです。なお、共通した特徴は恐ろしくケチな点、とのこと。

株式調査部:

上記のマーケット部門に属するようですが、要するに様々な金融商品、例えば株式を調査しレポートを発表するアナリストがいる部門です。自動車などのセクターに分かれて企業分析を行い「トヨタ株は買い推奨」とかレーティングをつけています。著者に言わせると様々な矛盾を孕んだ部署で「あぁ確かにな」と思わさせる部分も多いので、やはり本書を購入して読むことをお勧めします。

クオンツ/システム:

ここに関しては、本書ではあまり詳しい言及はありませんでした。金融工学を駆使して、金融商品を組み合わせて新しいセールス商品を作ったり、いろんなものを証券化したりするのが、クオンツ。社内の決済やそれにともなう様々なシステムの開発・保守を担当するのがシステムと言う程度です。これらはミドル・オフィスと(投資銀行部門やトレーダーはフロント・オフィス)言われ、著者によると、いつも怒鳴られたり、時には殴られたりしていたそうです。現在もそのような行為が行われているかは知りませんが。

ヒューマン・リソース:

人事部のことです。日本企業の人事部とはことなり、採用や異動・解雇などの権限は一切持ちません。そうした権限は各部隊のマネージャーがもっています。更に人員数の割り振り、つまり「日本支社は◯◯部門で◯◯人」という人員の大枠を決めるのは、本社権限とのこと。では、人事部は何をするのか?というと、解雇が決定した人に訴訟なんか起こさず、ちゃんと辞めてもらうよう仕向ける仕事だそうです。ちゃんと辞めてもらうのが下手な人は、自分がちゃんと辞めることになるそうです。

社会人3年目で日本の上場企業社長より高い年収

平均年収が7000万だったり、社会人3年目の社員に数千万のボーナスを出したり、なぜここまで高給なのか?(だったのか?)というと、当然ながら「儲かっているから」となるでしょう。

筆者は金融の世界は全くわかりませんが、何となく、社運をかけた企業買収や資金調達に従事する重要な業務であり、また他に代わりがないから、超高額なフィーが成立するのだろう、くらいに考えていました。ずいぶんと騒がれながら、先月、売却が完了した東芝メモリの事例をみても、企業ファイナンスは失敗すれば企業を倒産に追い込むこともありえますし、逆に2兆円もの資金を集めることは、やはり誰でも出来ることではないので、間違いではないのでしょう。

しかし本書では、超高額な給料の原資となっているのは、実は自己勘定によるトレーディングの収益だったと書かれています。トレーダーの報酬は契約により、だいたいが歩合給になっており、大きなボーナスを受け取るためには、大きなリターンが必要です。大きなリターンには当然大きなリスクを取る必要があるのですが、トレーダーからしてみれは、大きなリスクを取っても、最悪クビになるだけ。しかし、大きなリターンを得れば人も羨む報酬を得ることが出来る。そうなると、トレーダーがめいっぱいのリスクを抱え込むことは、当然の論理的帰結です。経済が順調で抱え込んだリスクが顕在化しない内は、日本の上場企業の社長を上回る年収を得られたのですが、そのリスクが顕在化したのが、リーマンショックだったと書かれています。通常、リスクとリターンの大きさはイコールである必要があります。得られる物や事と失う物や事は、釣り合っていないといけません。しかし、外資系投資銀行においては、失うものはたかが知れており、得るものは際限なく大きくなるという、バランスの崩れた状態だったと。まるで夢のような世界ですね。

以上、筆者の知らない桃源郷は、10年前に日本にも六本木あたりに存在したんだなぁ、できれば筆者もその場所に居合わせたかった、というお話でした。

■作品;「外資系金融の終わり」

■著者;藤沢数希

■種類;ビジネス書

■刊行;2012年9月

■版元;ダイヤモンド社

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