誉田哲也:「武士道シックスティーン」の感想と、河合先輩がいい、というお話。

簡単なことさ。それが好きだって気持ちを、自分の中に確かめるんだよ。

※文春文庫 武士道シックスティーン 誉田哲也著 P325より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

武士道シックスティーン

本書「武士道シックスティーン」は、誉田哲也先生による、剣道に青春をかける女子高生を描いたエンタメシリーズ小説の第1作です。「武士道シリーズ」は、他に3作あり「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」「武士道ジェネレーション」があります。本作は2010年に成海璃子さん、北乃きいさん主演で映画化されたり、アフターヌーンやマーガレットで漫画家もされているため、ご存知の方もいらっしゃると思います。

著者である誉田哲也先生は多彩な先生で、本作のような青春モノの他には、「ストロベリーナイト」に代表される、推理小説「姫川玲子シリーズ」が有名ですね。こちらは本シリーズとは全く違う作風で、警視庁捜査一課殺人犯第十係の女性班長を主人公にした、ハードボイルドな推理小説で、本当に同じ作家が書いた小説か?と感じてしまうほどです。こと姫川玲子シリーズは、竹内結子さん主演で2010年にフジテレビ系列でドラマ化、2013年には同じく竹内結子さん主演で映画化(こちらの原作は同じく姫川玲子シリーズ「インビジブルレイン」)されており、武士道シリーズよりも知名度は高いかと思います。

筆者は誉田先生の「武士道シリーズ」「姫川玲子シリーズ」双方とも大好きな作品で、ほぼ全て読んでいます。どちらも甲乙つけがたいシリーズですが、どちらかというと、本書から始まる武士道シリーズの方が、とっつきやすいと考えています。

登場人物

本シリーズは、主人公である磯山香織・西荻(甲本)早苗の2人を中心に、シックスティーン=高校1年生、セブンティーン=高校2年生、エイティーン=高校3年生、ジェネレーション=卒業後を描いています。登場人物が非常に個性的であり、シリーズを重ねるごとに、剣道という切り口から、2人の主人公が個性の強い登場人物との出会いを通して、どのような成長をとげるか?が楽しみな作品です。ネタバレにならない程度に、本作の重要な登場人物を紹介してみたいと思います。

磯山香織:

本作の2人いる主人公の1人。神奈川県警の助教である剣道家を父に持ち、兄とともに3歳から剣道を始め、中学3年生の時、全日本中学選手権準優勝という実績を持つ剣道エリート。兄は既に剣道をを引退しており、そのことを常々残念に思っている。

剣道とその勝敗へのこだわりを生活の中心に据えており、一般的な女子高生とは、趣味・興味・価値観において大きく異なっている。宮本武蔵(新免武蔵)を心の師と仰いでおり、「五輪書」を愛読する。休み時間には、鉄アレイを用いた上腕・下腕の鍛錬を行う傍ら、この五輪書を読みふけっており、その傾倒ぶりが伺える。

入学した神奈川県の東松学園は剣道の名門であり、中学時代に気まぐれで出場した地域の大会で敗北を喫した、もう一人の主人公「西荻(甲本)早苗」と、兄が剣道を辞めるキッカケを作った「岡巧」が在籍している。雪辱と兄の仇討ちを胸に誓いながら入学した。

ここまでの記載でもわかる通り、性別こそ女性であるが、考え方や嗜好は男性に近く、思想や価値観は、もはや修験者のそれに近い。16歳にしては、大変に自立しており周囲の反応は一切気せず自身の考えを貫ける強さを持つ。ただし、協調性が決定的に欠けており、利己的かつ極端な価値観を周囲に押し付ける、年齢相応の未熟さも随所に見られ、軋轢の原因となる。

大柄でも小柄でもなく、ごく標準的な体型であり、日本人形のような純和風の顔立ちであるが、その気性の激しさを表すように、眉が釣り上がった表情が頻繁に見られる。また通常の部活動に青春を捧げる高校生のように日焼けはしておらず、色白である。よく口にするセリフは「メーン」「カティィィアァ」「武運長久を祈る」。

西荻(甲本)早苗:

本作に2人登場する主人公の1人。剣道は中学から始めたため経験は浅いが、抜群のセンスを持つ。幼少時代に習っていた日本舞踊の動きを無意識に剣道に取り入れており、その複雑な足さばきは、磯山香織をもってしても見切ることができず、偶然ではあるが中学時代に対磯山戦せ勝利を収める。

磯山香織が剣道における勝敗を最重要と考えるのに対し、西荻(甲本)早苗は、自身の習熟度を重視しており、価値観の違いから衝突を繰り返す。協調性には優れているが、やや積極性に欠けている面がある。気性は極めて穏やかであり、精神的にも大変に安定しており、磯山香織からは、そのやや天然ボケと見えなくもない所作から「お気楽不動心」と命名されている。このように、剣道の経験、勝負への執着、気性などあらゆる面で、磯山香織と対照的な人物として描かれているが、剣道への情熱と考え方においては磯山香織と一致しており、友人でありライバルであり、恋人?のような深い関係を築いていく過程が、本作最大の読みどころとなる。

ややこしい家庭環境と、ややこしい理由で名字がよく変化する。主人公の名字がシリーズを通してこれほど変化することは珍しい。父・母・姉との4人家族。2歳年上の姉である西荻(甲本)緑子が、早苗と同じ東松学園に在籍している。在籍中からファッション誌のモデルとして活躍しているほど容姿端麗。また、緑子の恋人である1学年下(早苗の1学年上)の岡巧は、剣道部のエースであるだけでなく、神奈川県高校剣道界のエース的存在に成長しており、大変な美男子で憧れの的となっている。なお、この岡巧は磯山香織が一方的に自身の兄の仇と定めており、姉妹で磯山香織とは因縁の深い関係である。

桐谷玄明(きりやげんめい):

磯山香織が所属する町道場「桐谷道場」の道場主。磯山香織は心の師を宮本武蔵としているが、現実世界では桐谷玄明を師としている。本作の後半では西荻(甲本)早苗とも関わりを持つ。また本作のみでなくシリーズ全篇を通して桐谷道場は重要な役割を果たす。桐谷玄明は、本シリーズの冠でもある「武士道」の体現者

河合祥子:

磯山香織と西荻(甲本)早苗の1学年上で、同じ東松学園剣道部に所属する高校生。本シリーズでは比較的登場回数が多い人物ではある。単に筆者が気に入っているという理由のみで紹介させていただく。モデルをしている緑子にこそ劣るが、誰もが認める大変な美人。気性は穏やかで西荻(甲本)早苗は「聖母のよう」と評している。頭の回転も速く、周囲の洞察に優れ、人望もある。剣道の腕前も高校2年生にして学園トップクラスで東松学園団体チームの副将を務める。つまり才色兼備で多くの男性が描くであろう理想的な女性を体現している。本作では女子高生なので、あまり思い入れを込めるとロリコンと誤解されるため、紹介はここに留める。筆者は決してロリコンではない。どちらかというと熟女の方が好みであることは、自他ともに認めるところである。

簡単なことさ。それが好きだって気持ちを自分の中に確かめるんだよ。

冒頭で紹介しているセリフは、西荻(甲本)早苗の父が発したセリフです。父は素材研究を仕事とし、自身でも素材開発の会社を経営する人物でしたが、様々な事情から倒産の憂き目にあい、立ち直ることが出来ず行方不明になってしまいます。

本作の後半で、なんとか立ち直るのですが、その立ち直る理由を語った際のセリフです。いい言葉だと思いした。筆者も含め、人間は歳をとると挑戦がしにくくなります。失敗した際のリスクがリターンに対して大きくなっていくからです。しかし、それでも自分の中で「好きだ」という気持ちを確かめることが出来れば、やはり挑戦することが出来るということでしょう。更に挑戦に失敗した後も、必ず立ち直ることが出来ると言えます。いい言葉ですね。

以上、好きだって気持ちを自分の中に確かめた時、「やっぱそこまで好きじゃないかも。。。。」ということばかりな筆者は、あまり挑戦はしないでおこう、というお話でした。

■作品;武士道シックスティーン

■著者;誉田哲也

■種類;エンタメ

■刊行;2010年2月

■版元;文春文庫

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