誉田哲也:「武士道エイティーン」を読んだ感想と、やっぱり河合先輩がいいな、というお話。

シュは守る、ハは破る、リは離れる。で、守破離。

※文春文庫 武士道エイティーン 誉田哲也著 P401より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

武士道エイティーン

本書「武士道エイティーン」は、誉田哲也先生の、青春スポーツ・エンタメ小説の第3作となります。

参考 第1作「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」の記事はこちら↓

誉田哲也著 武士道シックスティーンを読んだ感想を書いています。

書名が示すとおり、「武士道シックスティーン」=16歳=高校1年生。「武士道セブンディーン」=17歳=高校2年生。本書「武士道エイティーン」=18歳=高校3年生。つまり、磯山香織と甲本早苗の剣道に捧げる高校生活の総決算の年となります。第1作で出会い、親友ともライバルとも違う「戦友」としての絆を築いた2人は、第2作で神奈川と福岡という離れた地でそれぞれ剣道に打ち込みます。肝心なところで連絡を取りつつ、お互いを支え合い精神的にも成長し、ただの勝負を超えた「武士道」の本質への足がかりを掴みました。そして、集大成の第3作となる本書では、ちょっと意外な展開とともに、何とも言えないホッコリとした、それでいて凛とした空気が漂う読後感があり、絶対に読んでいただきたい傑作です。

登場人物

本書は、起承転結で言えば「結」にあたる作品なので、まったく新しい登場人物は出てきません。しかし、第1作・第2作では、あまりフォーカスが当たっていなかった、意外な人物の物語が、本人の独白という形で展開されています。本シリーズの本筋には、あまり関係のない人物ですが、シリーズにピリッとアクセントを効かせる役割を担った人物達です。詳しく書いてもネタバレにはならないと思いますが、簡単に紹介させていただきますね。

西荻緑子:

本シリーズの2人いる主人公の1人、甲本早苗の実姉。甲本早苗は家庭環境や福岡南高校の剣道部顧問、吉野正治の指示で度々、名字が変わるのだが、緑子に関しては本人の意向により「西荻」で統一されている。甲本早苗が転校する前に在籍していた、東松学園に通っており、2歳上である。非常に容姿端麗であり、東松学園在学中よりティーンファッション誌のモデルとして活躍していた。モデルとしての実力は高く評価されており、東松学園を卒業すると同時にモデル業に専念し、大学進学はしていない。なお、在学中の成績は大変に優秀だったとのこと。

本作では、どういうわけか、この西荻緑子の独白が挟まれる

現在はティーン誌を卒業し、大手出版社が発行するOL系のファッション誌の専属モデルとして活躍している。実在する女性ファッション誌でいうと「oggi」や「CLASSY」が近いと思われるが、緑子が19~20歳と考えると、やや若すぎる。「CanCan」くらいが年齢層としては合致するかと思うが、OL系ではない。まぁ、この3誌の中間くらいをイメージすればいいかと思う。表紙を飾ることもあるようなので、TOPモデルの地位を築いているものと推測されるため、一般的な会社員と比較して、かなり高水準の年収があると考えられる。

本作では、専属モデルを勝ち取るための苦悩も描かれている。多くの女性にとってモデル業とは「憧れ」であるが、実態は非常に厳しい世界のようだ。筆者は、あまり詳しくないので想像だが、カメラを向けられて、あのようにカッコイイポーズ、美しい笑顔を作ることは困難を極めるはずである。

「もっと大人っぽくできる~」

「はい~、ぐっと柔らかな感じで~」

「ちょっと、アンニュイな表情、やってみようか?」

みたいな、筆者が聞いたら「分かるわけねーだろ、アンニュイとか、オメーがやってみせろよ、オイ」くらいは言いたくなる、極めてアバウトな指示がカメラマンから飛んでも、嫌な顔ひとつせず、何時間も服をとっかえひっかえしながら、あーでもない、こーでもない、と写真を撮られまくる。編集者は中年のおばちゃんで、モデルのテンションを下げないように、「キレイよ~」「かわいい~」とアホの一つ覚えみたいに、年甲斐もなく黄色い声援を間断なく繰り返す。一般の人間から見ると、明らかに異様な光景が繰り広げられているのが、撮影現場だと考える。そんな苦行を誰よりうまくこなし、大手誌の専属契約を勝ち取ったのだから、緑子は非常に優秀なモデルなのだと思う。

また、年頃の女性につきものの恋愛ネタも、もちろんある。東松学園のアイドルで神奈川県道界のエース、岡巧と付き合っていたのだが、事務所の意向で別れさせられることになる

事務所のマネージャーは「あなたのためにならない」と、ドラマでよくあるセリフを吐くのだが、モデルは事務所にとって商品である。その中でも緑子は、大手誌の専属モデルという、かなりキャッシュを生み出す大切な商品なので、剣道界のエースだか何だか知らんが、どこの馬の骨とも知れない高校生のガキにスキャンダルでも起こされたら、商品に傷がついてキャッシュフローが激減するため、無駄なリスクは最小限に抑えておきたい、というのが正直な腹の内である。つまり「会社のために別れなさい」が正しいのだが、商品価値の下落は、モデル当人の収入と将来にも打撃を与えるため、「あなたのためにならない」でも間違いではない

ということで、モデルとしての実力は高く、人気もあり成功しているのだが、社会人経験が不足しているため、事務所にうまいこと言いくるめられて、健気に別れた彼氏(岡巧)の留守録メッセージを聞きながら、今日も撮影に精を出している、という、華やかだが、やや可愛そうなキャラクターである。

河合祥子:

「武士道シックスティーン」の記事でも書いたが、甲本早苗の1学年上で緑子の1学年下の、美人剣道部員である。繰り返すが筆者は、この河合祥子がお気に入りなので、再度の登場となった。東松学園では、ビッグカップルだった岡巧&西荻緑子の破局に、この河合祥子が一枚かんでいたという描写が、武士道セブンティーンに出てくるのだが、その詳細も緑子の独白で語られる。結果は先に書いた通り、河合祥子は何ら影響しておらず、ただ緑子が事務所に言いくるめられただけなのだが、なにせ筆者がお気に入りのキャラなので、登場させてみただけだ。

一点、緑子の目から見ても、河合祥子は美人だとの言及があったことは付け加えておく

桐谷隆明(きりやりゅうめい):

本シリーズを通してのキーパーソンとなる「桐谷玄明(きりやげんめい)」の兄。桐谷玄明の独白の形で、その人物像が語られている。

人格者であり非常に優れた人物であるが、のっぴきならない事情から、桐谷道場を継いで大変な苦労をする。この辺りは、本シリーズのネタバレになってしまうため、ぜひ本書を手にとって読んでいただきたい。

シュは守る、ハは破る、リは離れる。で、守破離。

これは甲本早苗が後輩に向けて励ましの言葉として発したセリフです。筆者も知りませんでしたが「守破離」とは、茶道や武道もしくは芸術における「師匠と弟子」の関係性を表しているそうです。

守・・・教えを守る。支援のもとに作業を遂行する。

破・・・教えを破る。作業を自分なりに分析しアレンジする。

離・・・教えから離れる。新たな技術や作品を創造する。

ざっくりまとめると以上のようなことだそうで、ちょっといい言葉だなと思ったため、MEMOとして残したいと思いました。

話は変わりますが、守破離と似た熟語で「序破急」というのがあります。序破急を用いたアニメ映画で「エヴァンゲリオン(序・破・Q)」というのがありますが、最終章が2020年公開と最近告知されました。筆者はエヴァが大好きなのですが、本当に2020年に間に合うのかなぁ、と疑ってしまいます。

以上、2020年には何としても、劇場版エヴァの最終章が見たい、というお話でした。

■作品;武士道エイティーン

■著者;誉田哲也

■種類;エンタメ

■刊行;2012年2月

■版元;文春文庫

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