浅田次郎:「プリズンホテル 2 秋」を読んだ感想。登場人物のセリフがカッコ良すぎる。

「まちがいをしねえことは、手柄をたてるよりずっと難しいんだ。そんなことがまだわからねえのか、このクソデカ」

※集英社文庫 プリズンホテル 2 秋 浅田次郎著 P291~292より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

プリズンホテル 2 秋

本書は、筆者が読むと必ず泣いてしまう作家:浅田次郎先生の「プリズンホテル シリーズ」第2作です。浅田先生の作品は、天切り松シリーズしかり、このプリズンホテルシリーズしかり、自分でも「なぜかわからない」くらい泣いてしまいます

参考 天切り松シリーズのまとめはこちら↓

浅田次郎先生の「天切り松シリーズ」名言まとめです。

筆者の読書時間は主にトイレですが、浅田先生の作品を持って入ると、涙は出るわ、排泄物は出るわで、上から下から大変に忙しい時間となります。

また電車の中でも「泣かせの次郎」は全く手加減をしてくれないため、簡単に涙腺が決壊します。いい大人が電車の中で涙を流しながらハナを啜っている、時々しゃっくりまでする、という異常な状態になるため、TPOにはちょっと注意が必要です。

本作を含むプリズンホテルシリーズは、基本的には楽しく読める作品なのですが、様々な事情を抱えた登場人物の人間模様の中に、たまらなく「切ない」シチュエーションが出てくるため、やはり筆者の涙腺はひとたまりもありません。そう、浅田次郎という作家は「切なさ」を描くのが異常にうまいのですね。巧みな情景描写、登場人物の語り口が神がかり的に「切ない感情を掻き立てる」のだと思います。

登場人物

第1作「プリズンホテル 1 夏」の記事では、主要登場人物をご紹介しましたが、本シリーズの魅力はなんと言っても、個性的な登場人物です。実在したら、是非とも会ってみたい人間味あふれた、それでいて真っ直ぐで、でも秘密を抱えている人物達です。

参考 プリズンホテル 1 夏の記事はこちら↓

浅田次郎 著「プリズンホテル 1 夏」を読んだ感想です。

プリズンホテル=監獄ホテルは、広域指定の任侠団体、関東桜会木戸組組長の木戸仲蔵をオーナーとする、つまりヤクザ屋さんによって運営されているホテルです。従って普通(カタギ)のお客様はほとんどおらず、業界関係者(ヤクザ屋さん)がメインの顧客となります。

ところが、ちょっとした手違いで、常連任侠団体の慰安旅行と、警視庁青山署の慰安旅行が同日程となってしまい、ヤクザ屋さんと警察が同時に宿泊する自体となったところから、物語が展開します。

以下、本シリーズの登場人物の紹介続きです。

田村美加:

本シリーズの主人公で人格破綻者:木戸孝之介の内縁の妻で、筆者が心惹かれる、田村清子の一人娘。6歳。心臓病を患っている祖母と3人で暮らしている。

「100人の男が100人とも振り返る」母、清子の美貌を受け継いでおり、愛くるしい顔立ちをしている描写がある。6歳という年齢としては驚異的にしっかりしている。ちなみに、田村清子が本書には、ほとんど登場しないことが、筆者には、やや心残りである。

本作の冒頭で急にプリズンホテルへの宿泊を思い立った木戸孝之介に、一人留守番をしている最中、急な呼び出しを受けるも、自分で旅支度を整え、東京駅での待ち合わせを成立させてた。更に、炊事・掃除・洗濯などの家事全般をこなし、国立博物館で芸術鑑賞もできる。木戸孝之介の着替えや、執筆時(木戸孝之介はベストセラー作家の設定)のコーヒーの準備もそつなく対応できる。

本作にて、絵の才能があることが明らかになった。常に携帯しているスケッチブックに静物画や人物画を描いており、木戸孝之介を戦慄させるほどである。田村美加が絵を書く描写は、本作以降、たびたび登場し、どちらかというと血なまぐさい本シリーズのストーリーの中では一服の清涼剤。

黒田アキラ:

関東桜会木戸組若頭であると同時に、プリズンホテル副支配人。巨体と巨顔を持つ筋骨隆々の典型的な極道。後頭部には大きな切り傷があり、実戦経験も豊富であることが伺える。

以下、本書より、訳あって恋人を殺そうとしている登場人物に同情した黒田のセリフを抜粋

「そこまでやる必要はねえ、と。そうか、じゃこうしましょう。命だけァ勘弁したって、片腕たたき落としやすか。それとも両目つぶして、新幹線のトンネルの中に捨ててきやすか。てめえの命はてめえで拾えよなー。なんちゃってーー。おっ、いいな、それ」

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 2 秋 P322より引用。

普段はホテルを空けることの多い、オーナーの木戸仲蔵に変わり、支配人:花沢一馬とともに、プリズンホテルを取り仕切っている。本シリーズの登場人物に悪人はいないが、黒田も例に漏れず善人。

主人公:木戸孝之介とは浅からぬ因縁があるが、本シリーズのネタバレとなるため、ここでの記載は控える。

義理堅く人情にあついため、部下(木戸組・ホテル従業員両方)からの信頼も厚く、言動にも筋が通っており名言も多い。

渡辺莞爾(わたなべかんじ):

警視庁青山署に所属する巡査部長。本シリーズを通しての主要登場人物ではなく、本作「プリズンホテル 2 秋」のみに登場する。本作のキーマン。名前の莞爾(かんじ)と同じように、毎年恒例の慰安旅行の幹事をしている、冴えない警察官。定年まで3ヶ月となったが、目立った実績は皆無でずっと交番勤務だったため、他の職員からはやや軽んじられている傾向がある。

しかし、その実は警察官としての能力は高く、木戸仲蔵をはじめ、業界人(ようはヤクザ屋さん)も一目を置いている

以下、本書より渡辺莞爾の評を抜粋。

「いいや、言わせてくんない。鉄砲玉はワリ食ったって映画になるけんね。じゃがよ、こんなみたいな本物のおまわりは、一生冷飯くうほかはなかろうもの。わしの口からそこの若い者ンに言って聞かしたるわい」

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 2 秋 P340より引用。

筆者が、本書「プリズンホテル 2 秋」で最も感動した人物

まちがいをしねえことは、手柄をたてるよりずっと難しいんだ。

これは「登場人物」紹介した、渡辺莞爾(わたなべかんじ)が、階級は上の後輩に向けて発したセリフです(渡辺=巡査部長/後輩=警部補)。

警察官の世界とは、ちょっと違いますが、ビジネスも同様のことが言えますね。手柄を立てるにはリスクを背負う必要がある。しかし功名心に負けて、必要のないリスクテイクをしてしまうと、関係者に限らず周囲の人間に、思わぬ迷惑をかけてしまうことがある。

物事の本質を見極め、保身・功名心を頭から切り離し、最善の対処を選択することは大変に難しいことです。

筆者の胸にも大きく響きました。

以上、でも、やっぱり手柄は立てる魅力にはあがらい難いな、というお話でした。

■作品;プリズンホテル 2 秋

■著者;浅田次郎

■種類;エンタメ

■刊行;2001年7月

■版元;集英社文庫

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