浅田次郎:「プリズンホテル 3 冬」を読んで、人の生死について考えてみる。

「いいか小僧。死んでもいいというのと、死にたいというのは大ちがいだ。最高の男と最低の男のちがいだぞ。一緒くたにするな。」

※集英社文庫 プリズンホテル 3 冬 浅田次郎著 P120より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

プリズンホテル 3 冬

本書は浅田次郎先生の「プリズンホテル シリーズ」第3作です。前作までの2作は、どちらかというと享楽的な要素が多く、何かテーマをもたせて読者に考えさせる、もしくは問題提起する趣は少なかった印象ですが、本作「プリズンホテル 3 冬」では、人間の死生観がテーマとなり、物語を串刺しにしています。

人間の生き死に、つまり「死生観」に関しては、伊坂幸太郎先生の「死神シリーズ」は、大変に深く考察されていると思います。

参考 死神シリーズのまとめ記事はコチラ↓

伊坂幸太郎:「死神の精度」「死神の浮力」で印象に残るフレーズをまとめています。

本書には、

✔ 命がけで山に登る世界的アルピニスト

✔ 自殺願望のある中学生

✔ 安楽死を求める患者の願いを叶えた医師

✔ 救命救急センターに20年務めるナース

など、一般人と比較して、かなり人間の生死に近い距離にいる人間が多数登場します。シリーズの1~2で登場し大暴れした、任侠団体(ヤクザ屋さん)の宿泊客は出てきません

その分、じっくりと「生きるとは?」「死ぬとは?」について考えながら読むことができるため、学ぶことも多いです。自分を見つめ直す機会も与えてくれる良書だと思います。

登場人物

既にプリズンホテルシリーズの主要登場人物は、「プリズンホテル 1 夏」「プリズンホテル 2 秋」の記事でご紹介しました。

任侠団体(ヤクザ屋さん)が運営するホテルなので、業界人(ヤクザ屋さん)のオーナー:木戸仲蔵と従業員:黒田アキラなどや、主人公であるベストセラー作家:木戸孝之介+100人の男性が100人とも振り返る美貌の持ち主:田村清子などの基本的な主要人物は本書でも登場します。

参考 プリズンホテル 1 夏 の記事はこちら↓

浅田次郎 著「プリズンホテル 1 夏」を読んだ感想です。

参考 プリズンホテル 2 秋 の記事はこちら↓

阿部マリア:

第三次救急、いわゆる心筋梗塞・脳卒中・多発外傷・心肺停止など重篤な症状のある患者に対する医療措置を行う、救命救急センターの看護婦長。院内感染リスクが高く、医師・看護師ともに入れ替わりの激しい救命救急に20年間勤めている。

以下、本書冒頭での紹介が以下、

<血まみれのマリア>ーー大学病院ではみんなが畏怖と敬意とをこめて、そう呼ぶ。

第三次救急のための最高の設備を整えた救急センターが解説されて依頼、二十年ものあいだ血の海の中をはいずり回っている名物ナース、<血まみれのマリア>

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 3 冬 P29より引用。

看護師としての能力は非常に高く、またズバ抜けた経験値から、同僚の看護師のみならず、救命医師からも頼りにされる存在。20年間で対処した患者数:20,000名、生還:15,000名、死亡:5,000名。長期間、人間の生死に立会ったためか大変に度胸がある。プリズンホテルの従業員(ヤクザ屋さん)程度では、まったく動じない胆力を持ち、その並々ならぬ貫禄から、業界(ヤクザ屋さん)の名のある姐御(組長の奥さん)と間違えられる

以下、阿部マリアの気性を象徴するセリフを引用する

「本当よ。胸ぐら掴んで、『アレスト(心停止)なんてこと簡単に言うんじゃない。ステルベン(死んだか)かどうかは私が決める。ここでは私が法律よ!』ってね。ハッハッハッ、ざまみろってんだ」

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 3 冬 P36より引用。

なお、本人は自身の容貌を「疲れた40女」と評しているが、周囲の反応からは美女であることが伺える。

平岡正史:

ターミナルケア=主に癌などにより回復や体の機能維持が望めない患者に対して、身体的・精神的苦痛を緩和する目的で医療的措置が講じられる。いわゆる終末医療の専門医

子宮および多臓器に転移が認められる末期ガン患者を担当していたが、本人の希望により「安楽死」の措置をとり事件化しマスコミに追われている。

木戸仲蔵の親分であり、広域指定の任侠団体:関東桜会組長であった故・相良直吉のターミナルケアを担当した縁で、プリズンホテルに匿われている。

開業医の息子として生まれ何不自由なく育ち、外科医を志したが、決定的に不器用だったため内科医を経て、終末医療の専門医となる。

医師としての能力は非凡であるが、周囲の評価は低い。以下、平岡正史自身の評価を本書より引用。

ついに患者は医師団の中で一番やさしそうな、口下手で不器用で、古い入院患者たちからはヤブと噂されている内科医に、人間としての最後の願いを打ち明けたのだ。

「私を、殺して下さい。」

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 3 冬 P76より引用。

武藤嶽男:

世界的なアルピニスト。アルプス三大北壁と言われる、

✔ アイガー北壁:スイスを代表する山。標高3,970m/氷壁は1,800m。日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ!」でイモトアヤコが登頂に成功したことで、日本での知名度は高いと思われる。なおイモトアヤコが登頂したルートは北壁ルートではない。

✔ グランド・ジョラスの北壁:フランスとイタリアの国境に位置する。標高4,208m。知名度は、やや劣るが登頂の難易度は高く、最難関と言われる。

✔ マッターホルンの北壁:スイスとイタリアの国境にあり、標高は4,478m。アイガーと同じく日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ!」でイモトアヤコが登頂に成功した。もちろん、切り立った北壁ではなく別ルートでの登頂となる。

上記の冬期単独登攀を成功させた。

また世界最高峰のエベレストを不可能と言われた南壁からの登頂を含め、ヒマラヤ8,000m峰を四座を制した。世界のトップアルピニスト。

多くの登山家がそうであるように、凍傷により四肢の指を欠いている。本文中では右手は親指と人差し指以外の3本を失っている。

当然ながら非常にストイックな性格とたくましい肉体を有しており、発言も示唆に富む人格者である。以下、筆者が好きな武藤嶽男のセリフを抜粋する。

「あれこれ考えるな。男の選ぶ道は迷うほど多くはない」

※集英社文庫 浅田次郎著 プリズンホテル 3 冬 P281より引用。

死んでもいいというのと、死にたいというのは大ちがいだ。

冒頭のセリフは、武藤嶽男が自殺願望のある中学生に発したものです。字面は似ていますが、「何かに命をかけているかどうか?」という点で、大きな違いがあります。

現代社会において、命がけで取り組むことは、殆どありません。おそらく一生ない人間のほうが多いのではないでしょうか?

本書には自分の命もしくは他人の命をかけて仕事をしている人間が多数出てきます。登山家・医師・看護師。社会にはその他、警察官・消防士など、少ないかもしれませんが、命がけの仕事が他にもあり、上記のような仕事と比較して筆者の仕事の責任は、なんと軽いのだろうと考えさせられます。

もちろん、職業に貴賎はないので、どの職業が尊いとかいうつもりはありませんが、命がけの仕事とは、どのようなものか?筆者には想像がつきません。本書を読むと「きっとこんな感じなのだろう」という予想は出来ます。それだけでも、本書は読む価値のある本です。

以上、筆者の仕事は、別に命がけではないので、失敗しても誰も死なない。思い切っていこう!というお話でした。

■作品;プリズンホテル 3 冬

■著者;浅田次郎

■種類;エンタメ

■刊行;2001年9月

■版元;集英社文庫

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