池井戸潤:「半沢直樹シリーズ 3 ロスジェネの逆襲」を読んで、世代論について考えてみた。

「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」

※文春文庫 ロスジェネの逆襲 池井戸潤著 P394より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

半沢直樹シリーズ 3 ロスジェネの逆襲

本書は池井戸潤先生の大ヒットシリーズ「半沢直樹シリーズ」の第3作目です。驚異的な視聴率を記録した、TBS日曜ドラマ「半沢直樹」は、シリーズ第1作「オレたちバブル入行組」、シリーズ第2作「オレたち花のバブル組」が原作となっています。

参考 第1作「オレたちバブル入行組」の記事はコチラ↓

池井戸潤 著「半沢直樹シリーズ オレたちバブル入行組」を読んだ感想を書いています。

参考 第2作「オレたち花のバブル組」の記事はコチラ↓

池井戸潤 著「半沢直樹シリーズ オレたち花のバブル組」を読んだ感想を書いています。

本書「ロスジェネの逆襲」は、2010~2011年に週刊ダイヤモンドに連載され、2012年に単行本化されましたので、時系列としてはドラマ放映前に刊行されたものです。週刊ダイヤモンドでの連載中から大変に評価が高く、読者満足度で1位を獲得していました。

週刊ダイヤモンドは経済誌となるため、小説やコラムよりも、読者の目的は、経済ニュースや情報収集となります。その経済誌において連載小説が読者満足度で1位を獲得することは、極めて異例のことで、本作品の評価がドラマ放映前から非常に高かったことが伺えます。

半沢直樹シリーズに見る「ジェネレーションギャップ」

筆者は「半沢直樹シリーズ」の大きなテーマとして「ジェネレーションギャップ」があると考えています。

ジェネレーションギャップとは、一般的に「世代間における価値観のズレ」「世代による感覚の違い」のことを指し、具体的には

✔ ある世代では認知率100%に近い映画・テレビ番組・音楽が、違う世代では全く認知されていない。

✔ 上司・先輩など、集団内における「目上」の人間に対する接し方

などが上げられ、非常に広い意味で使用されます。

本書を含む「半沢直樹シリーズ」1~3作では、「3つの世代と会社組織における関係性の変化や、待遇の違い」がジェネレーションギャップとして度々議論されます。

世代間での単純批評は、常に結果論で議論されることから、失われた30年の渦中にある日本では、下の世代に有利となります。

つまり何をどう議論しもて結論が見えてしまっているため、「どの世代が正しく、どの世代が間違えた」のような議論に意味はないと考えています。

重要なのは、各世代の出来事と対応を客観的に捉え、今後に活かすための議論となります。

以下は、筆者のフィルターを通しているため、ちょっと偏った部分もあると思いますが、本書で衝突する3つの世代を書き出してみます。

団塊世代

堺屋太一さんの小説「団塊の世代」で使用されたことで、命名された。第一次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた人達を中心とする世代。

ベビーブームと呼ばれるほどに、出生数が多く、1947~1949年における3年間の合計出生数は約806万人となり、年間平均:270万人弱。2017年の年間合計出生数は94万1千人であり、現在の約3倍のボリュームを持つ世代。

高度経済成長・バブル景気を経験しており、日本が経済大国の地位を築く右肩上がりの時代と、人口ボーナスの恩恵を一身に受けてきた世代

「数=力」を体現するがごとく、学生自体は全共闘、社会で働いてからはバブル景気を生み出し、常に日本の戦後は、団塊世代を中心に展開してきたため、日本を経済大国へ押し上げた自負を持つ。

ただし、バブル崩壊後は為す術なく経済を後退させた。現在では、高度経済成長からバブル景気までの景気拡大において、単なる人口ボーナスの恩恵だったという考え方もある。

平均的な教育水準も高いとは言えず、お騒がせな世代。日本の高齢化に伴い、社会のお荷物となりつつある。

バブル世代

本書およびシリーズの主人公:半沢直樹の世代。1965~1970年に出生し、1988~1992年のバブル景気に就職した世代。

日本企業の業績が非常によく、日経平均が最高値を記録した絶頂期に就職したため、採用人数が大変に多い。また超売り手市場での就職活動であったため、現在では考えられない待遇を受けた。

具体的には、 内定を辞退して他社へ流れることを防ぐため、海外旅行・ディズニーランド・豪華な会食などを全て企業側の経費で体験させるなどの、学生接待が行われた。

ただし、就職直後のバブル景気崩壊による、企業業績の急速な悪化とともに再編が進み、人数と比較してポストが減少し団塊世代よりも不遇の会社員生活をおくる。

少数精鋭型の育成をされたため、同世代でも待遇格差が発生している。この世代から世代内選抜が始まったため、世渡りが上手い

本シリーズでは、

「銀行に入れば一生安泰、様々な夢を描いて入行したが、現実はバブルの配線処理と厳しい競争にさらされる。勝手に浮かれてバブル景気を起こして、破裂させた団塊世代の尻拭いをオレ達がさせられているんだ」

と団塊世代への恨み節が、語られる場面もある。

ロスジェネ世代

ロストジェネレーション=失われた世代と言われる。1993~2005年の就職氷河期に大学または高校を卒業し、大変に厳しい就職活動を強いられた。逆算すると出生が、大卒者で1971~1983年、高卒者で1975~1988年ごろと考えられる。

本書には、半沢直樹の部下であり、ロスジェネ世代の代表として、森山雅弘という人物が登場する。

非常に厳しい就職活動を余儀なくされたため、職業を選ぶ余裕はなく、本来の自分と会社で働く自分の間で「本当にこのままで良いのか?」と迷いを抱えている。団塊世代やバブル世代と比較して会社や組織への愛着・信頼が低く、会社組織への価値観の違いが浮き彫りになっている。

バブル崩壊後の景気後退に歯止めがかかるかと思われた矢先に、リーマンショックを経験し、「好景気」というものは経験したことがない

「昔は良かった話」を、団塊世代・バブル世代から聞かされるが、

「お前らが、そんなチャランポランだったから、オレらが割喰ってるんだろうが」

と苦々しく思っている。

ちなみに、筆者もロスジェネ世代。

簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。

本記事の冒頭で紹介している、「正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること」は、半沢直樹の信念を語ったものとなります。

主人公:半沢直樹は、大変に強い信念を持って行動しています。半沢直樹は自分が正しいと思ったことは、決して曲げません。銀行の偉い人から圧力があっても屈しません。理不尽な理由で自身の待遇が悪化しようとも、絶対に撤回しません。

この鋼鉄の信念をひたむきに貫き通す姿、つまり「意志による強力な一貫性」に、視聴者は惹きつけられたのだと思います。そして、この「意志(信念)による一貫性」が、団塊世代・バブル世代・ロスジェネ世代、更にその下の世代も含めて、「貫ける軸」になり得ると、筆者は考えます。

組織による独自の事情や、政治的に歪められる事実、保身によるご都合主義などではなく、自分の頭で考えた信念こそが、それぞれの世代が同じ方向を向ける羅針盤になるのではないかと。

以上、何だかんだ言っても、やっぱバブル景気は存分に味わってみたかった、、、、という、お話でした。

■作品;ロスジェネの逆襲

■著者;池井戸潤

■種類;経済小説,エンタメ

■刊行;2015年9月

■版元;文春文庫

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