池井戸潤:「半沢直樹シリーズ 4 銀翼のイカロス」を読んだ感想と、中野渡頭取は好きだなぁ、という話

「物事の是非は、決断したときに決まるものではない」

※文春文庫 銀翼のイカロス 池井戸潤著 P418より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

半沢直樹シリーズ 4 銀翼のイカロス

本書は池井戸潤先生の大ヒットシリーズ「半沢直樹シリーズ」の第4作です。2018年9月時点での最新作となります。

シリーズ第1弾「オレたちバブル入行組」では、当時、半沢直樹が所属する東京中央銀行_西大阪支店の支店長までもが共謀した計画倒産による、不良債権5億円の回収に挑み、第2弾「オレたち花のバブル組」では、120億の損失を出した老舗ホテルの再建と、金融庁の敏腕オネエ検査官と対決したました。

2013年の夏、TBSの日曜ドラマで大ヒットした「半沢直樹」は、本シリーズの1作目「オレたちバブル入行組」と第2作目「オレたち花のバブル組」が原作となっています。

参考 第1作「オレたちバブル入行組」の記事はコチラ↓

池井戸潤 著「半沢直樹シリーズ オレたちバブル入行組」を読んだ感想を書いています。

参考 第2作「オレたち花のバブル組」の記事はコチラ↓

池井戸潤 著「半沢直樹シリーズ オレたち花のバブル組」を読んだ感想を書いています。

シリーズ第3弾「ロスジェネの逆襲」では、「出向」の憂き目に会い、東京セントラル証券の企画部長という立場から、企業買収を挟んで、母体の東京中央銀行を相手に、一歩も引かない攻防を展開しました。

参考 第3作「ロスジェネの逆襲」の記事はコチラ↓

池井戸潤 著「半沢直樹シリーズ 銀翼のイカロス」を読んだ感想を書いています。

そして、最新作の本作「銀翼のイカロス」では、規模・権力ともに最強の敵と相対することとなります。

どんな権力や理不尽にも屈することなく、己の信念を貫く半沢直樹は、本作でどのような立ち回りを演じるのか。本作の読みどころでもあります。

東京中央銀行 頭取 中野渡謙(なかのわたり けん)

本シリーズは、シリーズを通して、もちろん半沢直樹を主人公としてストーリーが展開します。本作「銀翼のイカロス」では、半沢直樹と並列してもう一人、主人公と言える人間がいると感じています。

それが、東京中央銀行 頭取 中野渡謙です。

中野渡頭取はシリーズ第2作「オレたち花のバブル組」より東京中央銀行の頭取を勤めており、ドラマでは北大路欣也さんが、中野渡役を演じました。筆者が本シリーズに登場する人物で最も好きな人間です。

ここでは、本作「銀翼のイカロス」もう一人の主人公:中野渡頭取を少し紹介したいと思います。

方針は「行内融和」

中野渡が頭取を務める東京中央銀行は、UFJ銀行と合併する前の東京三菱銀行が、東京銀行と三菱銀行が合併したのと同じように、東京第一銀行(架空の銀行)と産業中央銀行(架空の銀行)が合併して発足しました。

銀行に限らず、企業統合や合併では、どこでも起こり得ると思うのですが、作中に登場する東京中央銀行でも、旧東京第一銀行の行員と、旧産業中央銀行の行員で派閥が形成され、行内で勢力争いが行われていました。

そんな銀行の頭取を任された中野渡の方針は「行内融和」。つまり、出身行別にいがみ合うのではなく、仲良くやりましょう、ということです。

これは見た目ほど簡単なことではありません

企業には、少なからず「企業文化」が存在します。

✔ 朝礼をするか、しないか

✔ 上司の呼称に役職をつける、つけない(〇〇課長か、〇〇さん)

✔ 書類の書き方、社内システムの組み方

大きなものから、小さなものまですり合わせていく必要があります。その中で、当然、摩擦も出てくるでしょう。そうすると、合併相手先のことを

「わかってない、頭が悪い、おかしい」

と非難することになり、最終的には合併前の出身企業同士で派閥を組み、社内闘争になります。

そんな中「行内融和」を経営方針の最重要事項に据え、時には自身の考えやポリシーよりも、行内融和を優先し、同時にメガバンクの舵取りも担っているということになります。

半沢直樹の評価

部長だろうが、常務取締役だろうが、そして頭取だろうが、決して遠慮のない半沢直樹は、中野渡頭取を、どう評価しているのでしょうか?

本書内で中野渡に関する評価が書かれている部分を、以下抜粋します。

中野渡の融資のスタンスは極めてオーソドックスで誇り高い。だが一方、行内融和に配慮しすぎる側面もあり、それが往々にして読みきれない経営判断につながることがある。それに、敢えていうなら、中野渡は決して清廉潔白なだけのバンカーではない。策士であり、清濁併せ呑む人間臭い男でもある。

「本来なら、そんなものは断れ、と一刀両断しただろうな。そういう人だったはずだ」

かつての中野渡の仕事ぶりし知っている半沢は評した。いろいろあったが、中野渡のことは正直、嫌いではない。むしろ、目標とするバンカーであり、尊敬に値する。

※文春文庫 銀翼のイカロス 池井戸潤著 P71~72より引用

ちょっとかぶりますが、もう一つ。

いままで七年に亘って東京中央銀行を率いてきた中野渡謙は、清濁併せ呑む戦略家であり、経営者であり、そして何より超一流のバンカーだった。

不良散見処理と金融システム安定化に向けた勇猛果敢な取り組み。そして行内融和への不信。在任期間中における中野渡の凄まじいまでの奮闘ぶりは半沢の記憶に深く刻まれ、決して色あせることも、忘れされることもない。中野渡は、自らの行動をもって、バンカーとしての矜持と理想、そして戦い方を半沢に教えてくれた。

※文春文庫 銀翼のイカロス 池井戸潤著 P419より引用

大変に珍しいことかと思いますが、半沢直樹もべた褒めですね。常に泰然自若、しかしその考えは読み切れない。誇り高いが、懐も深い。理想の上司だと思います。

物事の是非は、決断したときに決まるものではない。

これは、本シリーズで筆者が敬愛する中野渡頭取の言葉です。

「物事の是非は、決断したときに決まるものではない」。

つまり、決断した後の経過によって、是非は判断されるということです。これは、物事の先を見通す力が重要であると言っていると同時に、正しい判断は絶対に出来ないことを意味しています。

では、どうすればいいのか?

中野渡頭取は続けます。

「評価が定まるのは、常に後になってからのことだ。もしかしたら間違っているかも知れない。だからこそ、いま自分が正しいと信じる選択をしなければならないと私は思う。決して後悔しないために」

※文春文庫 銀翼のイカロス 池井戸潤著 P418より引用

筆者も、この言葉を肝に銘じたいと思います。いや、別に高い地位にあるわけではないですが。

繰り返しますが、正しい判断・選択はありえません。しかし「常に何が正しいかを考え続けること」だけは、正しいことと言えると思います。

やはり、自分の頭で考え続けることが大切だと思うからです。

以上、ドラマの続編、やってくれないかなぁ、というお話でした。

■作品;銀翼のイカロス

■著者;池井戸潤

■種類;経済小説,エンタメ

■刊行;2017年9月

■版元;文春文庫

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