池井戸潤:「下町ロケット 2 ガウディ計画」を読んだ感想。本物のモノ作りと生産性について。

「挫折して、大変なときもあったけど、やっぱり人生ってのは、生きてみるもんだ」

※小学館文庫 下町ロケット ガウディ計画 池井戸潤 P405より引用

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

下町ロケット ガウディ計画

本書は池井戸潤先生のヒットシリーズ「下町ロケットシリーズ」の第2弾となります。「下町ロケット」は、ご存知の方も多いと思いますが、第145回直木賞受賞作です。

参考 「下町ロケット」の記事はこちら↓

池井戸潤 著「下町ロケット」を読んだ感想を書いています。

2作目の本作と併せて、TBSの日曜21時枠、阿部寛さん主演でドラマ化され、1~5話が1作目、6~10話が本作「下町ロケット ガウディ計画」の構成で、2015年の民放ドラマで最高視聴率を獲得しました。

ドラマのオンエアに先立ち、朝日新聞で「下町ロケット ガウディ計画」の連載が始まり、ドラマがガウディ計画に差し掛かる直前で単行本が発売になるという、斬新なクロスメティアの試みがなされ、こちらも話題になりましたね。

なお、2018年10月より同じTBSの日曜21時枠で、続編がオンエア予定です。このシリーズが大好きな筆者も、大変楽しみにしています。

本物の「モノづくり」を見せてくれる作品

本シリーズの大きな魅力は、もちろん中小企業である佃製作所が、持ち前のチームワークと技術力で、大企業や華々しい実績を持つ企業へ挑み、打ち負かす「爽快感」です。

しかし一方、超高度な技術を持つ企業のモノづくりとは、どんなものか?が、味わえることも醍醐味であると感じています。これは、筆者が本シリーズで最も好きな点です。

本作では、医療機器の開発を軸にストーリーが展開します。医療機器は、そもそも動作不良があると取り返しがつかないのですが、本作で開発する機器は、検査などで使用する機械や、手術などで使用する器具ではなく、直接人体に埋め込む性質の機器です。

当然、動作保証とそれに伴う開発の難易度は、大変に高いものとなります。そんな機器をどうやって開発しているのか?

以下、その開発過程で壁を越えられず苦悩する現場担当者と、佃航平のやり取りが分かりやすので、抜粋します。

立花の表情には苦悩すら滲んでいた。辛抱強い、理詰めの男だからこそ、悩んでいる。

「開発には、必ずそういうブラックボックスがある」

佃は言った。「理詰めや数式で解決できる部分は実は易しい。ところが、あるところまで行くと理屈では解き明かせないものが残る。そうなったらもう、徹底的に試作品を積み上げるしかない。作って試して、また作る。失敗し続けるかもしれない。だけど、独自のノウハウっていうのはそうした努力からしか生まれないんだ」

黙って耳を傾けている立花と加納のふたりに、佃は続けた。「スマートにやろうと思うなよ。泥臭くやれ。頭のいい奴ってのは、手を汚さず、綺麗にやろうとしすぎるキライがあるが、それじゃぁダメだ」

※小学館文庫 下町ロケット ガウディ計画 池井戸潤 P213より抜粋

これは、モノづくりだけではなく、マーケティングにしろ、資産運用にしろ、スポーツにも当てはまる考え方だと思います。

事物について突き詰めていくと、必ず理屈で解けないものが残ります。そしてトライ&エラーを繰り返し、少しずつ少しずつ、再現性を高めていく作業が続きます。

高い技術力を持つ開発現場では、天才が「パッとひらめいて、瞬く間に誰も思いつかなかった製品を作ってしまう」そんなイメージがありましたが、やってることは泥臭いのですね。

筆者は親近感を持てました。また、実現できるか分からない目標に向かって努力する様は、大変好ましく感じます。

開発における生産性とは何のか?

めちゃくちゃ難しい仕様の製品を作るため、泥臭く、絶対に諦めることなく、トライ&エラーを繰り返す姿には、感動すら覚えます。しかし、生産性という観点から見た場合はどうなのでしょうか?

開発が成功するかどうか不明でありながら、「何か」が発見できるまで、試作と失敗を繰り返す。これは生産性が高いのでしょうか?低いのでしょうか?

「生産性=利益/時間」と定義すると、開発に成功し、その製品・部品・技術が大きな利益をもたらせば、どれだけ時間と資金を突っ込んでも、生産性は高いと言えるでしょうし、その逆であれば、生産性は低いということになるでしょう。

では、「利益が出るか?」は、いつどこで、誰が判断するのでしょう。答えは、誰も判断できないとなると思います。さらに言えば、開発過程で出来た副産物が、大きな利益を生むことがあります。このような時の生産性は、どう判断するのでしょうか?

つまり筆者が言いたいことは、「生産性」という言葉が安易に使われていますが、その定義は、職場や業務の内容によって様々だということです。そこをしっかり事前に定義する必要があるのです。

そして、そのようなことは、まず不可能です。そもそも「イチイチ『生産性』を定義する」作業自体が、低生産だとすら考えます。

ちなみに、生産性については、先日こんな記事も書いています。

参考 「ムダが多い職場」を読んだ感想はコチラ↓

ちくま新書「ムダな仕事が多い職場」を読んだ感想を書いています。

挫折して、大変なときもあったけど、やっぱり人生ってのは、生きてみるもんだ

本記事のタイトルにもなっていますが、「挫折して、大変なときもあったけど、やっぱり人生ってのは、生きてみるもんだ」というセリフは、本作主人公、佃航平のセリフです。

もちろん、佃航平率いる佃製作所の努力が実を結んだ時に発せられたものですが、心からこのような言葉を吐ける人間は、ある程度、考え方が似ていると筆者は考えています。

以下、本作より、佃航平の姿勢を端的に表している箇所を抜粋します。本作の軸となる医療機器開発プロジェクト「ガウディ」。その是非を巡って、佃航平と社員達の議論です。

「そうできると、社長は本当に信じてるんですか」

皮肉な口調で、そうきいたのは、江原である。この男には遠慮がない。そして嘘もない。裏表なく、誰に対しても同じ態度で接する。

「ああ、信じてる。だから、君らに頼んでるんだ」

四人からの返事はない。もとより、社長がやれといったからといって、単純に、はいそうですか、というような連中ではないし、そういう社風でもなかった。納得できないことはするな、と誰あらん佃自身が常日頃いい続け、そういうふうに社員を育ててきた。それは研究者だった頃からの佃の信条である。

小学館文庫 下町ロケット ガウディ計画 池井戸潤 P130より抜粋

納得できないことはしない」ということです。

佃航平は「人生は生きてみるもんだ」と言っています。

納得できないことでも、言われたから取り組んだことで成果が出た時は、「生きてて良かった」と言うのではないでしょうか。

「人生は生きてみるもんだ」とは、自分の行動原理に納得し、人生を主体的に生きてきた人間のみが言えるセリフだと考えています。

そしてこの、「納得できないことはしない」「人生を主体的に生きる」この2つが、仕事における生産性にも、重要な役割を果たすような気がしています。

それが何なのかは、まだ考え中です。

以上、2018年10月14日(日)21:00~TBSドラマ、絶対見るぞ。というお話でした。

■作品;下町ロケット ガウディ計画

■著者;池井戸潤

■種類;経済小説,エンタメ

■刊行;2018年7月

■版元;小学館文庫

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