小川洋子:「博士の愛した数式」を読んだ感想。数学トリビアが意外に面白かった話。

博士はいつどんな場合にも、ルートを守ろうとした。どんなに自分が困難な立場にあろうと、ルートを守ろうとした。ルートは常にずっと多くの助けを必要としているのであり、自分にはそれを与える義務があると考えていた。

新潮文庫 博士の愛した数式 小川洋子著 p210より引用。

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

博士の愛した数式:第一回本屋大賞受賞作

本書は小川洋子先生による小説で、2004年に記念すべき第一回本屋大賞を受賞しました。本屋大賞は、芥川賞・直木賞に代表される他の文芸賞と違い、書店員さんの投票のみによって選出されます。

その他の文芸賞が、大御所の作家先生など、「書き手」によって選ばれるのに対し、書店員さんという、「読み手」によって選考される点が画期的だと思います。

筆者はこの本屋大賞受賞作が、読者目線に近く、買ってよかった!、読んで良かった!と思える書籍だと考えています。

※誤解の無いように付け加えますが、もちろん、他の文芸賞を受賞した作品も、十分に購入する価値がある作品です。また文学的な価値も大変に高いものと考えられます。

しかし、人には好みがありますので、例えば芥川賞の受賞作などは、筆者は読んでも、ちょっと難しくて分からないとこもあります。

本書「博士の愛した数式」は、記憶に障害を抱えた数学者と、母子家庭を家政婦業で支える母と子供の交流を描く、心温まる作品です。

経済的な成功は決して望めない環境であっても、「幸福」は実現できると強く考えさせられる一冊でした。

打算のない子供への愛情

適切な距離を保った関係と明確なルール

お互いが尊敬の気持ちを持つ

このようなことを守れば、裕福でなくとも、「幸福」を形にできることが、本書を読むとわかります。

博士の愛した数式に登場する「数学」トリビア:

本書は、家政婦の母とその子供(ルートと呼ばれている)、記憶障害を持つ数学者(初老)の、それぞれが純粋な心を持ち、交流する様子が、大変に綺麗な文章で描かれています。

ミステリーの要素はありませんので、物語の山場といった部分はありませんが、全体を通してその物語の「美しさ」が強く印象に残る作品です。

その中で、所々でアクセントになっているのが、主人公の数学者が披露する、数学に関するトリビアです。

筆者は文系の学部へ進学したので、数学は高校までしか勉強していません。従って、この数学トリビアがちょっと面白かったので、以下にまとめておきます。

友愛数=220と284:

筆者はまったく知りませんでしたし、多くの人間もまったく知らないと思いますが、数字には「友愛数」という組み合わせがあるそうです。

まず220の自分自身、つまり220を除く約数を書き出します。

220:1、2、4、5、10、11、20、22、44、55、110

次に284も同様に、284を除く約数を書き出します。

284:1、2、4、71、142

そして、それぞれの約数の和を計算します。

1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284

1+2+4+71+142=220

つまり、220の約数の和は284。284の約数の和は220。この繋がりを持つペアの数字を「友愛数」というそうです。双子数や親和数とも呼ばれるそうですが、筆者はこの「友愛数」という呼び方が一番かっこよくて好きです。

大変に希少な組み合わせで、かなり偉い数学者(フェルマーとか)でも1組しか見つけられなかったとのこと。

友愛数は220と284のペアが最小の数で、本書では220と284の次に小さい友愛数のペアとして1184と1210が紹介されています。

ちなみに、この友愛数は無限に存在するのか?数に限りがある(有限)か?は、まだ明らかになっていないそうです。

完全数=28:

これも筆者はまったく知りませんでした。そして多くの人も、まったく知らないと思いますが、世の中には「完全数」と呼ばれる数があるそうです。

パーフェクトナンバー

ちょっとかっこいいですね。

本書では完全数の代表として「28」が登場します。

「完全数」の要件は何か?というと、まず、先の述べた「友愛数」と同様に自身の数(この場合28)を除く約数を書き出します。

28:1、2、4、7、14

この約数の和は

1+2+4+7+14=28

つまり、

自身の数を除く約数の和が、自身の数と等しい

約数の和が自身の2倍の数と等しい

が完全数の要件となります。

本書では、以下のように解説されています。

「一番小さな完全数は6。6=1+2+3」

「あっ、本当だ。別に珍しくないんですね。」

「いいや、とんでもない。完全の意味を新に体現する、貴重な数字だよ。28の次は496。496=1+2+4+8+16+31+62+124+248。その次は8,128。その次は33,550,336。次は8,589,869,056。数が大きくなればなるほど、完全数を見つけるのはどんどん難しくなる。」

新潮文庫 博士の愛した数式 小川洋子著 p70より引用。

2018年11月現在、完全数は50個発見されているそうです。

ちなみに完全数「28」は、本書「博士の愛した数式」でも有用な役割を果たす、キーナンバーになっています。

上記のような数式にまつわる会話が、本書には随所に登場しますが、

難解でつまらない話を、よくこんな綺麗な文章にすることができるものだ

と驚きます。

作家とは、やはり文章を紡ぐことにおいて、特殊な才能を持った方々なのだと思いますね。

ルートは常にずっと多くの助けを必要としているのであり、自分にはそれを与える義務があると考えていた:

冒頭に紹介した一節は、本書に出てくる、初老の数学者が10歳の子供(ルートと呼ばれている)に接する態度や様子を表現したものです。

子供への接し方として、これほど正しいあり方と表現が他にあるでしょうか。

あるのかもしれませんが、筆者は他に知りません。

子供は常にずっと多くの助けを必要としている。そして大人には「助け」を与える義務がある

いいセンテンスだと思いました。

以上、数字に強い人って、男性でも女性でも、なんだかかっこよく見るのは、筆者だけでしょうか?というお話でした。

■作品;博士の愛した数式

■著者;小川洋子

■種類;小説

■刊行;2005年12月

■版元;新潮文庫

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