島田荘司:「御手洗潔のダンス」を読んで、物事の本質とは、を考えてみた。

 

「空を飛ばぬ鳥、泳がぬ魚、赤くない郵便ポスト、これらが今後世界で最も重要なものたちだ」

※文庫版 御手洗潔のダンス 近況報告 島田荘司著 P315より引用。

 

ミステリーの体裁をとりながら、御手洗潔が社会制度の問題を鋭く指摘する

 

こんにちは。読書@toiletです。

読書@toiletの読書日記も兼ねて読んだ本の紹介させていただいてます。

 

御手洗潔のダンス:御手洗ファン必読の書

島田荘司の人気シリーズ、御手洗シリーズの第5作。短編集です。

冒頭の発言は本作の(シリーズ全般を通して)主人公、御手洗潔が、本作のもう一人の主人公である石岡くんとの会話に出てきます。

一部分だけを抜き出しているので何のことか分かりませんが、本作が発表された1990年時点での世界の成り立ち、あり方と向かうであろう方向性を、御手洗の目線で語っている場面です。

 

太平洋戦争が終結して45年が経過した1990年の日本は平和憲法のお陰で戦争を一度も経験していない。

しかし世界に目を向けてみると45年間、戦争を一度も経験していない国家は非常に限られる。戦争はなくならないのか?戦争の原因とは何なのか?これからの世界に必要なものたちは?

という問いに

御手洗は、

 

「腕白な虐めっ子が全員死に絶えて、虚弱児ばかりになっても、その虚弱児同士がこんどは殺し合いを始める。」

「それが政治というものだよ石岡くん。自国民の利益のためだと信じてね。その実鍛えた腕力、それ自体のためだ。軍事参謀は仕事を休みはしない。それが鍛えた筋肉という物の本質だよ」

「ある努力は、常に見返りを要求する。誰にも負けない情熱的な努力と、見返りを求めぬ心、そしてグルメにならない人間、これが究極の理想だ。」

※文庫版 御手洗潔のダンス 近況報告 島田荘司著 P314〜315より引用。

 

と答えています。

つまり

 

✔ 戦争はなくならない。

✔ 戦争をなくす目的で開発した兵器、核兵器に代表される強力な軍事力は、やがて軍事力を行使することが目的化し、そのすり替えに誰も気づかない。

✔ そんな世界では、当初の目的を忘れない、事物の本質を見失わない強力な意志が必要だ

と説いています。

 

話があまりに巨視的な視点から語られているため、自分事として捉えるのが難しいのですが、個人の生き方についても重要なことを述べているように思います。

 

事物(じぶつ)の本質を見失わない、もしくは見極めようとする強力な意志

 

ただ、事物の本質を見失わないどころか、本質を見つけることですら難しいことです。

情報が氾濫する現代において、それはますます困難になっています。

 

そもそも「本質」とは何なのか?

先般ある研修で、これに対する回答を得ることが出来ました。

 

ある事物の特徴を決定する普遍的な要素

 

だそうです。

例えば、「空を飛ぶ」という能力は鳥の代表的な特徴ですが、鳥の本質ではありません。「飛べなくなった鳥」もまた鳥であり、飛行機は鳥ではないからです。

 

✔ 「水中を泳ぐ」も魚の本質ではありません

✔ 「赤い色」も郵便ポストの本質ではありません

 

では鳥や魚、郵便ポストの本質とは何なのか?

残念ながら私の頭ではそれを見つけることが出来ていません。ただ本質を考え続けることが大変重要だと御手洗は言っているように思います。

その思考こそが人間の本質であると。

 

本作を起点として、御手洗潔はミステリー小説の名探偵という枠組みを飛び越え、思想家のような役割へ、その立ち位置を変えていきます。

 

こんな人いるの?と言いたくなる、御手洗潔の能力

また本作では御手洗の驚異的な能力が明かされています。

✔ 学歴は京都大学医学部中退。ただし在学中の成績はダントツトップ

✔ 趣味のギターはプロ級の腕前。速弾きならジミ・ヘンドリックスを上回る可能性がある

✔ 遺伝子研究の分野に関心をいだいており、ノーベル賞級の発見をしている

スーパーマンですね。

 

この本を読むなら、こんな人

✔ 御手洗潔のことがもっと知りたい人

✔ 御手洗潔と友だちになりたい人

✔ 御手洗潔の恋人になりたい人

✔ 御手洗潔の近況が知りたい人

※もちろん、上記以外の方が読んでも面白いです。

 

■作品;「御手洗潔のダンス」

■著者;島田荘司

■種類;ミステリー

■刊行;1993年7月

■版元;講談社

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